各務麗至「生き生きて生きて戦後の喜寿の秋」(「詭激時代つうしん」13より)・・


 「詭激時代つうしん」13*栞版(詭激時代社)。同時に「詭激時代つうしん」12*栞版が贈られてきたのだが、こちらの冊子は各務麗至の小説集である。収録されているのは「悲しいけれど」「覚書にかえて―ー追憶 松本道介先生の思い出」「―-戞戞一五七号(2023・11・15)あとがき から(注ー。・巻頭に、ことに小夜子詩を掲載」が 収載されている。その「覚書にかえて」の中に、


(前略)松本道介先生に繋がる思い出からどうも自分探しになってしまいそうだった。

 というもの―ー。「文學界」同人雑評の頃で、今猶勉強させて貰っているという忘れることのない思いが私にはあるjからだった。私に語れるほどのものがあるとしたら、それこそ先生のお蔭、教えられて育てられての賜なのであった。

 現代仮名遣いになっても、人と違った作風をと私は模索した。

 子どもの、表現の追いつかない感知のような、行間の余白に詩のような感動を、と、改行や句読点を多用するようになっていた。

 そして、行き着いたのが主語を使わない文章で、何のことない「私小説千年史」で日本語独特の主客融合なる言語形態であると教えられたり、俳句からひらいめいて書いてきたその後のいかにも省略だらけの自己流の文章が何も新しい作文でなかったと頷いたり、

 この方向でいいのだと……。

 おおおげさに言えば日本文学史的には異質でも何でもなかったと幸福な能天気な力をいただいたものだった。


 とあった。ともあれ、俳句「容赦なき―ー附 炎天」の掲載されている号より、いくつかの句を挙げておきたい。


  初恋だろか小走りは時雨かな        麗至

  容赦なき炎天ミサイルが飛ぶ  

  死は必然それとも当然敗戦忌

  秋天や人は人にして人殺し

  炎天や光にひかり重ねけり

  炎天やリセットされて死んでゆく



★閑話休題・・山上鬼猿「新酒酌む土佐の郡の夕明り」 (「月刊ひかり 西山俳壇 城貴代美選)・・


「豈」同人でもある選者・城貴代美「西山俳壇」(「月刊ひかり」京都府 光明寺)の特選と選者詠を下記に挙げておこう。


  羅の人と行き交う塩小路      黒田十和

  落蟬やその鳴き声も聞かぬ間に   柴田祥江

  花八手ともかく声を挙げにけり   城貴代美



           鈴木純一「実柘榴やひとつ一つに鏡の間」↑

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