毬矢まりえ「残党は巣を守れずに秋の蜂」(『「妖精に注意』)・・
毬矢まりえ第一句集『妖精に注意』(朔出版)、栞文に神野紗希「ほがらかな虚実」、阪西敦子「聞こえ続ける人」、堀切克洋「半透明な日本語で美を紡ぐ」。帯文と序句は中原道夫。序句は、
天蓋に汝の歌 放て明易し 中原道夫
帯には、
金雀枝やここより妖精に注意
「窓を開けてどうぞその顔を見せておくれ」で始まるカンツォーネの名曲「マリア・マリ」を十代の頃知った。それから五十年経って、「マリヤ・マリエ」という女性が「銀化」の門を叩いた。驚くと同時にG・ステファーノのその曲を知ってのことなのではと、因縁めいた出会いが今に続いている。その彼女の第一句集。一言で彼女の作風を言うなら、西洋文学がその出自、基盤にあるようで、所謂、黴臭いに日本風土にはない軽やかな、オード・トワレのような甘やかな匂いがする。
とあった。 また、著者「あとがき」には、
(前略)振り返れば、夢中で本を読み空想し、物語や詩を書いていた少女時代。アメリカに留学し充実した寮生活を送った高校時代。英語もピアノも本格的に学びました。大学・大学院時代にはフランス文学を研究しました。
ところが、難病になり挫折。いえ、実はここから人生に光が差しました。深見けん二門下の母を通して、俳句と出会ったのです。(中略)
俳句に関する評論執筆に続いて句作も始めました。妖精の杖を得たように湧き出る俳句に熱中していると、苦しみが昇華されるようでした。
ともあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。
いづれのおほんときにか鶯の初音 まりえ
フランスに原子炉真白若草野
小春日や臓器を持たぬぬいぐるみ
少女には少女の流儀百千鳥
不機嫌は辛子に溶かし心太
山の黙ほたるぶくろの鳴るばかり
クオ・ヴァディス万緑胸に閉ぢこめて
緑蔭にチェスさす騎士と死神と
今日の日の爆弾レモンひとつ切る
寒林檎カナンの蜜を閉ぢ込めて
鋭角のザムザの視野に五月来る
秋扇指に逆らふひらくとき
霧の木々隣の木々を愛するか
小春日のさびし内臓軋みたる
異界より大凍滝の生ひ立ちぬ
毬矢まりえ(まりや・まりえ) 1964年、東京都生まれ。
★閑話休題・・八木重吉没後98年「茶の花忌」・TO-ENライブ「八木重吉を唄う!」(於:八木重吉記念館)・・
10月26日(日)午後1時半から、「八木重吉を偲ぶ会」(主催:八木重吉の詩を愛好する会)、講話に八木重吉研究家の今高義成、小澤則男。重吉詩の朗読、そして、重吉のライブ演奏歌唱としてYO=ENが重吉詩を作曲したオリジナルの歌をギター弾き語り。その後、重吉関係文学散歩、記念館見学なども行われた。
雨の中の茶の花も可憐だった。
撮影・中西ひろ美「油断して折れちゃった日のそぞろ寒」↑





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