佐藤鬼房「星月夜精霊をわがほとりにし」(「小熊座」10月号より)・・
「小熊座」10月号(小熊座俳句会)、同号の「鬼房の秀作を読む(182)」に、愚生が寄稿したので、一部を再録しておきたい。
第八句集『何處へ』の帯文に、「『みちのく』と『晩年』の二重奏。管・弦ともに鳴るおもむきがある」と記したのは神田秀夫。「綾取の橋が崩れる雪催」「星飛べり空に淵瀬のあるごとく」などの句が抽かれている。
主宰誌「小熊座」創刊は昭和六十年、鬼房すでに六十六歳。愚生が「十周年記念大会」に、パネリストで招かれた折に、三橋敏雄が祝辞のなかで「主宰誌をもつには歳をとりすぎている。せめてもう少し早く持ってほしかった」というようなことを述べられたのを思い出す。その二次会の席で、俳句を始めたばかりの渡辺誠一郎に初めて会った。(中略)
最後に鬼房氏にお会いしたのは、忘れもしない攝津幸彦一周忌の偲ぶ会(一九九七年十一月二十九日)に遠路駆けつけてくださった時だ。鬼房七十九歳。深謝の他はない!
本号には、他に小田島渚「俳句時評/表現としての匿名性」がある。それには、
昨年十二月、現代俳句協会青年部勉強会「名付けから始めよう 平成・令和俳句史」がZOOMにて 開催された。(司会黒岩徳将)。平成・令和時代に起こった俳句に関する事象とそれを取り上げたい理由を述べ、名付けをするもので、パネリストの赤野四羽、柳元佑太、岩田奎の回答はごく簡単に要約すると次の杳になる。(中略)
勉強会に戻ると、岩田は「みんなで新しい月並のリーダーズになろう!」と呼びかけた。「ズ」の複数形は特定の俳人ではなく、遍く届ける声として響いた。「みんな」、そして柳元のいう「ゆるやかなわたしたち」にも、匿名性の志向が感じられる。匿名性は声を解放し、フラット化は関係性を解体する。この二つが交わるところに、現代俳句が果たしうる最も鋭利なレジスタンスがあるのかもしれない。
とあった。その余は、本誌本号に直接当たられたい。ともあれ、本号よりわずかだがいくかの句を挙げておこう。
土食つて生き薔薇色に蚯蚓死す 高野ムツオ
ホモ・サピエンス新酒は舌を濡しては 渡辺誠一郎
ためらひなどなく白桃のかがやきぬ 川口真理
寒蟬のこゑ燎原の火となりて 佐川盟子
反対も涼しスリッパ右ひだり 津髙里永子
生涯の水のぼりゆく花水木 仁藤さくら
鵜飼舟闇に川鵜は火を怖じず 栗林 浩
白木槿不戦の鉄鎖赤く錆び 後藤よしみ
雲の峰焦土の山河視る明日か 武良竜彦
降りられない螺旋階段蚯蚓鳴く 関根かな
撮影・芽夢野うのき「この国をよくする子らの笑い声」↑
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