瀬戸優理子「白鳥の喉しんじつはずきずきす」(「We」第20号より)・・
「We」第20号(俳句短歌 We社)、本号の招待作家は瀬戸優理子「化身」20句とミニエッセイ。興味深く読んだのは早舩煙雨「台湾俳句川柳事情」。確か、青木亮人が「子規新報」で「時のうつろい、句の響き」という連載で、戦前からの台湾の詩歌について書かれていたことを思いだしました。あと一つ驚いているのは、斎藤秀雄の表紙エッセイ「ピアノとマリンバのための新撰犬筑波集」、俳句に短歌にその独自の追及は多才というほかない。
ともあれ、本誌本号より、いくつかの句歌を挙げておこう。
完熟をためらうからだ水の秋 瀬戸優理子
人は云う芯の強さを蛍袋白い 柏原喜久恵
父母私婆爺兄弟妹仏の坐 小田桐妙女
睡蓮の人意に人に届かぬ離れ方 丘 菜月
二人居のそれぞれに聞く亀の声 内野多恵子
あちこちに遊べぬ空地春嵐 江良 修
八月十五日水に手を置く 男波弘志
折りふしににつけて海鼠を数へけり 加能雅臣
蛇穴に入る死に黒子ふやしつつ 斎藤秀雄
うららかに歩く葬後の道は野に 竹本 仰
はららごを呑んで星霜ゆく父よ 田中目八
白塗りの田中は激怒寒卵 早舩煙雨
下萌えや若先生の処方箋 松永みよこ
天牛やこの世を捨てる気ゐます 森さかえ
水を打つくさびのように水を打つ 加藤知子
散歩して出会った人を今生の別れと思い挨拶をする 加藤和平
懐かしく思ふのだらう台湾の食べればうましこの臭豆腐 服部 崇
霧雨か何と呼ぶんだこの雨は濡れてもいいよ優しい雨だ 加藤朱美
淋しきをさよならだけが人生と言っては消えた人たちばかり 加藤知子
夫の目は「一生懸命いきている」介護のわれもそれに応える 弟子丸直美
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