森須蘭「入道雲の余白自転車こいでいる」(自由句会誌「祭演」72号より)・・


  自由句会誌「祭演」72号(ムニ出版)、本号は、創刊225周年記念合同句集である。各人30句とミニエッセイ。萩山栄一は、


  (前略)「祭演」の特徴は現代語俳句を徹底しながら、ポエムをおろそかにしていない点である。

 私は現代の趨勢に不満を持っている。古典語有季定型を疑う事もなく崇拝している輩に対してである。これからも蘭さんにはアンチテーゼを突きつけてほしい。


 とあった。ともあれ、本誌本号よりいくつかの句を挙げておこう。


  能登死ぬな河津桜は満開に        東 國人

  逃げられるだろうか日記の春を焼く    伊東裕起

  回春堂薬局を出て冴返る         金子泉美

  この世から身震いをして卒業す      金子 嵩

  押し出しの四球で終わる油照       川崎果連

  浜風を詩人が売って無人駅        髙坂明良

  目交ひに廃炉のありぬ潮干狩り      鈴木三山

  余白これ料紙の中の花ふぶき       諏訪洋子

  遠く来て水たっぷりと墓洗ふ       髙橋保博

  さくらさくらとみんなはなれてゆきました 田中信克

  星落ちて朝顔に血のかよいだす      塚本洋子

  西は戦争東に共同募金          中内火星

  千代に八千代にかまぼこ兵舎かぎとゐぬ  中尾美琳

  法師蟬有給休暇最終日          成宮 颯

  僕の影から夜がにじみ出てくる      萩山栄一

  木犀の気流に乗れば会えますか      服部修一

  十字架をゼロとラムネに割るならば   浜脇不如帰

  処方箋は月の渚を歩くこと        水口圭子

  ベランダに打ち水パートは休みです    宮原 純

  冬銀河 シーラカンスひらっ太古から  わたなべ柊

    令和5年3月25日

  骨壺に入りきらない春の山        森須 蘭



★閑話休題・・美輪明宏『戦争と平和 愛のメッセージ』(岩波書店)・・


 美輪明宏著『戦争と平和 愛のメッセージ』(岩波書店)の冒頭と、結びはこうだ。


 戦争とは、/あなたの愛する人が/死ぬ/ということです。(中略)

 もう一度、考えてみて下さい。/明日、自分が、/戦争に行くことになったら、

 どうしますか?

 

 美輪明宏(みわ・あきひろ) 1935年、長崎市生まれ。



      撮影・芽夢野うのき「秋の瑠璃の土手さて我は雑草」↑

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