原満三寿「俳騒の径にかえらぬ翳たずね」(『俳騒(はいざい)の径(みち)』)・・
原満三寿第12句集『俳騒(はいざい)の径(みち)』(私家版)、表紙装画は日和崎尊夫「花」。句作品以外は、なにもないシンプルな句集。添えられた便りには、
(前略)この夏は書斎で烏瓜の花を咲かせることに成功。その妖しい美しさに喝采いたしました。また「自発的隷従」(お役に立ちますぜ)という言葉を知り、その宿痾を深く考えさせられました。
このたびは、かような佇まいの冊子句集をお届けするご無礼をお許し下さい。
小生も寄る年波となり、生の感情も懐もいささか寂しくなりました。そこで、ご縁のある俳人様だけに献本することとし、希少部数。簡易印刷の私家版の句集といたしました。
とあった。本集の章立ては「孤蝶の骨」「老鬼の始末」の二章。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。
山椒魚(はんざき)の咬傷のこと他言せず 満三寿
俳騒のデジャ-ビュの径の老いたハグ
黒猫を抱いた麗子の古代微笑
*青年のころ岸田麗子さんに数度お会いした。
お地蔵のおつむにトンボ 逢いたいさ
修辞師の月光荘に開かずの間
浮雲や生はポロッで死はコロッ
震災の後にも先にも蠅つるむ
枕辺の屍蝋に舌さす蝶の群
かの春の裸灯がみえる老の春
死匠いわく地球(ぢだま)の宴もお開きだあ
謝罪なき神々も群れピカドン忌
半島の木枯らしに聴く震災禍
核災や合掌の象(かたち)に被曝蝶
あかつきへ八分の鬼児 泣かず佇つ
*八分=村八分
原満三寿(はら・まさじ) 1940年、北海道夕張市生まれ。
★閑話休題・・黒古一夫・清水博義編原爆写真『ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』(日本図書センター)・・
黒古一夫・清水博義編原爆写真『ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』(日本図書センター・2005年刊)。英語部分翻訳者はジェームス・ドーシー。「被曝を超えて、いま」の執筆者は山岡ミチコさん「原爆乙女と呼ばれて」、谷口稜嘩さん「生ある限り」。その他」「外国人被爆者」には広河隆一「広島を何度も歩いた」、「核なき世界を求めて」には、松谷みよ子「もう一つの福竜丸のこと」など。
撮影・中西ひろ美「はなびらの変な感じの痛みかな」↑
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