穴井太「吉良常と名付けし鶏は孤独らし」(「ペガサス」第23号より)・・

 

「ペガサス」第23号(代表・羽村美和子)、第23号作品評「鳥観図」に外部から江里昭彦が執筆している。興味深ったのは「雑考つれづれ」の連載記事、きなこ「原郷樹林逍遥…穴井太の俳句⓵」である。その結びに、


(前略)ぼくは今後も俳句によって「より良き生き方を求め」続々句集を刊行したいと考えている。


穴井太の俳句人生は始まったばかりである。  (次号へ)


 と書かれているように、これからが楽しみである。これから登場するであろう上野英信などとの筑豊ぶんこで、あるいは山福康政などとの交流も描かれるにちがいない。

 ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  つま先を月に合わせる夏至の客       F よしと

  竹皮をへらりと脱いで明日へ飛べ        きなこ

  春巻きの皮がパリッと響き夏         木下小町

  金魚玉客引かぬ遊女のあぶく         坂本眞紅

  スーパームーンあの日の海を操って      篠田京子

  刃物から夕立の匂い拭き取りぬ       瀬戸優理子

  永劫の戦後に咲けり月桃花          高畠葉子

  陽炎のたまに行き交う交差点         田中 勲

  ミサイルの飛び交う夜の星赤し        中村冬美

  戦前が触手を伸ばす水海月         羽村美和子

  ネモフィラの丘の天辺人消える        水口圭子

  夏の星そろそろ千になる折鶴         陸野良美

  向日葵や向きは何時でもかえられる      浅野文子

  風よ風卒業という風よ風           東 國人

  吉原は北枕なく青時雨            石井恭平

  いけずな春たちの忘れ物を拾う        石井美髯

  旧型のセスナ機遠し雲の峰         伊藤左知子

  桜坂 吾子の心音聞こえた日        伊与田すみ

  遠花火都市間バスの休憩地          及川和弘

  鳴ききった八日目の蝉ケ・セラ・セラ    本吉万千子

  巻き尺のもどる早さよ木の芽風       山﨑加津子



        撮影・中西ひろ美「今生の夏の終りの雌蕊かな」↑

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