松葉久美子「秋霖の鏡にひらくオッドアイ」(『雨より遠い燕たち』)・・
松葉久美子第3句集『雨より遠い燕たち』(ふらんす堂)、著者「あとがき」も何もない、実にシンプルな句集である。 愚生が松葉久美子の名を知るのは、半世紀近く前の、「鷹」と「琴座」誌上においてだ。明らかに意識したのは、書肆山田から句集『ゆめに刈る葦』が出たときである。確か、愚生の句集『風の銀漢』(書肆山田・1985年刊)上梓の翌年、書肆山田から出版されたのだ。当時、書肆山田から句集がでるのは珍しかったからだ。
著者略歴によると、その句集を1986年に上梓、「制作中止」とあるから、以後は全く消息不明といってよかった。句作再開は5年程前である。結社には所属せずに句作されているらしい。昨年、句集『屋根を飛ぶ恋人』(ふらんす堂)が出されたときは、驚きとともに少し感慨があった。今回の句集でも、かつての句風は一新されている。著者自身の想う処を目指しておられるようだ。
ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。
銀杏落葉どれもナイーブみなカーブ 久美子
ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲師走
春の風くうきの舟にくうきの帆
秋の虹天敵だった母へも雨
見よ音符はダリアの意識・暗号化
ダリア組み立てよ気球化ラボラトリ
母を焦がし子を吹き飛ばし原爆 忌
難民をふやす地球よ秋の波
短日の元ひとの街明日も瓦礫
未来すでに全部シュレッド竹の秋
滝壺の日月水に水の裏
(ひかる金魚)カフェは幻その客も
秋の薔薇プロコフィエフの不協和音
雪を仰ぐアリスは戦禍体験者
いもうとを忘れたアリス冬日向
人造湖干上がりいつも渇く月
クリスマスお菓子の家にないトイレ
アイノ・シベリウス微笑む春の雪
胸像の数多の瞳飛花落花
全世界の気化の混合夏の雲
松葉久美子(まつば・くみこ) 1955年、横浜生まれ。
★閑話休題・・田島征三展「夢の中から芽がでたよ」2025年9月3日(水)・木曜
休廊・12時~19時(於:三鷹市・ぎゃらりー由芽)・・
愚生は、24日に、三鷹駅南口から徒歩6分ほどの田島征三展(於:ぎゃらりー由芽+ぎゃらりー由芽つづき)に出掛けた。会期は9月3日(水)まであるが、2度目のトークイベントが、
・8月31日(日)17時~18時にはトークイベントがある。
「来年、出版予定の絵本のために・・・」といいう副題がついている。ぎゃらりー由芽の、
お近くの方は寄られるとよいと思う。
撮影・芽夢野うのき「汗つたうかすかに痒きわが人生」↑
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