伊藤政美「八月の蟻は足音たててゐる」(『一切衆生』)・・

 

 伊藤政美句集『一切衆生』(菜の花会)、著者「あとがき」には、


 この句集は、十一冊目になるが、再編集したものと四冊の句集を集約したものを含むので、実質的には『二十代抄』『四郷村抄』『天王森集』『青時雨』『雪の花束』に継ぐ六冊目の句集になる。

 令和三年から五年までの三年刊に「菜の花」に発表した七九一句から、三四〇句を収めた。集名は、令和四年冬、奈良県長谷寺で行われた「一泊吟行会」での作〈冬天や一切衆生青の中〉から採った。(中略)

 さて、この先は、もっともっと自由な俳句を書きたいと思う。例えば、年齢に合った口語発想の表現、呟いた一言がそのまま俳句になるような、そして、どんどん言葉を削って一読しただけでは何が言いたいのか分からない、それでいて何か心に沁み込んで簡単に否定出来ない、そんな俳句が書けたら面白いと思っている。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。


  弱さうな金魚から掬はれてしまふ         政美

  蛞蝓一生涯を銀の道

  死なないからと空蝉を飼つてゐる

  亀をみてゐる亀鳴くと思ふから

  晩年とは死後に言ふこと桜満つ

  酔芙蓉見せない色もありにけり

  湯豆腐ぐらり一人づづゐなくなる

  人をらぬところへ鳥の帰りたる

  飛ばないから紙風船は飾つておく

  花の空鳩など飛んで平和なのか

  人の手の荒れて汚れて秋の風

  紅屋橋新紅屋橋虫時雨

  十二月八日は人を撃つ日なり

  聖夜などと言ひ戦争をしてゐたる

  日捲りの骨だけ残り年詰る


 伊藤政美(いとう・まさみ) 1940年、三重県四日市市生まれ。



★閑話休題・・第61回府中市民芸術文化祭俳句大会のご案内(事前投句9月10日締め切り)・・


 府中市・府中市芸術文化協会主催、公益財団法人府中文化振興財団共催.府中市俳句連盟主管「第61回府中市民芸術文化祭俳句大会が、来たる10月19日(日)、午後1時~市民活動センター「プラッツ」第5会議室で開催される(参加費1000円)。大会当日句2句もあるが、兼題・当季雑詠での事前投句がある(9月10日締め切り)。以下に要領を記しておこう。是非、多くの方の投句、並びに参加をいただきたい。


 ・兼題投句 当季雑詠 1組3句(自作未発表)

 ・投句方法 200字詰め原稿用に記載、封筒に投句と朱書。

       (会員以外の方は、名前にふりがなと、電話番号を記載してください)

 ・送付先 183-0031 府中市西府町2-10-3-802

               笹木弘 宛 電話080-5409-9425

 ・投句料 1組につき1000円(投句に同封のこと)

 ・締切  9月10日(水)必着のこと

 ・選者  主選者 鳥居真里子先生(俳誌「門」主宰)

      委嘱特別選者約15名の先生が選句



   撮影・芽夢野うのき「猫じゃらしそこまでゆくにまた転ぶ」↑

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