大井恒行「オオウミウマ乗るは弥勒の心映え」(「俳句四季」8月号より)・・


               
     16句「声のない番犬ーヒデキ・スエモリに捧げるー」↑

 「俳句四季」8月号(東京四季出版)、特集は「なぜ、俳句をえらんだのか/私が俳句を選んだ理由」。リードに、「『短歌や詩、小説あるいは音楽や映像など様々な表現形式があるなか、ご自身が俳句という表現形式を選んだ理由、俳句だからこそ表現できる、できた、と思うことについて自由にお書きください。」というテーマで9人の執筆陣に書いていただいた」とある。その執筆陣は、石原ユキオ「俳句の辺境に住んでささやかに抵抗する」、岩田奎「円盤や棒を手に」、小川楓子「ヒップでホップな俳句」、小野裕三「完成と切迫性」、樫本由貴「以外なく」、関灯之介「身体性俳句論序説」、高崎公久「『蘭』へ入会のこと」、長島衣伊子「ひとすじに」、中村安伸「俳句というかたち」。愚生は、16句「声のない番犬に捧げるーヒデキ・スエモリに捧げるー」を寄稿した。ともあれ、以下に本誌、本号より、いくつかの句を挙げておきたい。


  かげろうの蛇生(あ)れており砂漠の汀(みぎわ) 大井恒行

  短夜のずいぶん奥で牛が鳴く           中内亮玄

  歌ひつつ歩けど遠し芒原             森賀まり  

  海底に眠る青蚊帳潜る夜は           駒木根淳子

  粛々と家族は減りぬ畳替             谷 雄介

  目に前に白鳥はるかにオスプレイ         松下カロ

  (あららぎ)も廃船(すてられぶね)も恒(いつまでも)

                          柳元佑太

  急カーブとなればなるほどふつふつと曲りて嬉し曲がらねば死ぬ  髙良真実

  大枯野生命あるもの眠らせて          吉田千嘉子

  二万人踊り抜けたる大路かな         大和田アルミ

  踏切の←も→も来て日永            斎藤よひら

  赤とんぼ夕暮はまだ先のこと           星野高士

  米寿の師へ白詰草の冠を             石川春兎

  青き蚊帳月光満ちて泳ぎけり           浅井愼平

  ぎちぎちの円座の涼しがらんどう         花谷 清

  知らぬ子の声日乳張る青嵐           西山ゆりこ

  きちかうや反物のまま五十年           岡田由季

  虫籠に胡瓜が入るほどの穴            西村麒麟

  ダービーに紙幣の向きを揃へたる        松本てふこ



      撮影・芽夢野うのき「立ちざまは生きざまなりや立葵」↑

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