渡邉樹音「新しい水着は恋をまだ知らぬ」(第70回ことごく句会)・・


  6月21日(土)は、第70回「ことごと句会」(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。兼題は「新」。以下に一人一句を挙げておこう。


  新薬の針より夏の血に溶ける       春風亭昇吉

  泰山木の花にしまつておくこだま      林ひとみ

  日本地図消せない民の沖縄忌        杦森松一

  籐椅子の凹みは父の置き土産        村上直樹

  青葉潮鳥語はいつも真上から        渡邉樹音

  仏飯の蠅はらうまたひとり         照井三余

  新じゃがは皮にこそあれ春の味       渡辺信子

  土(つち)から始(はじ)む日月火水木金  金田一剛

  青にならんと絡み合うかたつむり     杉本青三郎  

  魔女からの伝言ですとアマリリス      江良純雄

  幸せと言ふは退屈麦の秋          石原友夫

  新メンバー加え寿ぐ夏句会         武藤 幹

  児の胸のふくらみほどの月日貝       大井恒行


 次回は、7月19日(土)予定。ここで、チョッピリ、報告しておくと、二次会の懇親も終わって、新宿駅近くの路上で、現代俳句協会から連絡が入り、愚生の『水月伝』が、記念すべき第80回現代俳句協会賞に決まったと、嬉しい知らせをいただいた。深謝!!!



★閑話休題・・安村和義「世を憂ふ眼くもらず穀雨の忌」(「こんちえると」第91号/第5回大牧広記念俳句大会より)・・


「こんちえると」第91号(牛歩書屋)の「牛歩書屋日誌」には、


 没後6年・七回忌の今年、第5回大牧広記念俳句大会はご多忙の折、快く選句を引き受けて下さった贈呈読者の皆さまのお力添えで天地人を発表することができました。(中略)選任選者を持たない小紙は、一年に一度のこのイベントにおいて、著名俳人の選を受けることが何よりの悦びであり、自分の俳句を確認するよい機会となりました。


とあった。以下に、各選者の天の句を挙げておこう。カッコ内は選者。


 すててこやペンで戦ふ師の夜毎    深江久美子(黒川由紀子選)

 正眼の矜持揺るがぬ夏帽子       成田榮一(黒沢弘行・栗林浩選)

 カート押すまろき背中や蜆蝶      波切虹洋(小島浩子選)

 『全句集』学び新たに穀雨の忌      檜原れい(小林茂選) 

 新茶など供へてもらふあぐらかな     吉田春一(浅川芳直選)

 ボールペン滑りよきかな大牧忌      熊谷美之(荒井千佐代選)

 春昼のいくさ相手は知らぬ人      石原百合子

                  (池田澄子・鈴木光影・山﨑十生選)

 花吹雪正しき味の玉子焼        若林ふさ子(今野龍二選)

 師の眠る丘に囀り満ちくる日      朝賀みどり(上田日差子・山岸文明選)

 世を憂ふ眼くもらず穀雨の忌       安村和義(大井恒行・角谷昌子選)

 権力の遠いところに花筵          芒 

             (大内秀夫・小泉瀬衣子・白濱一郎・堀田季何選)

 穀雨かな核戦争経て八十年        長根芳夫(岸原清行選)

 椎若葉時代を詠むを師系とし       青柳洋子(辻村麻乃選)

 いかり肩解かぬつばくろ広の忌      杉山昌平

                   (仲 寒蟬・なつはづき・山下知津子選)

 捨て子猫下校の子等の手から手へ     原澤松乃(中嶋鬼谷選)

 雷鳴や終末時計とオルゴール       村田妙子(武良竜彦選)

 


  撮影・芽夢野うのき「神さまは夏至の日のまなこで考える」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

秦夕美「また雪の闇へくり出す言葉かな」(第4次「豈」通巻67号より)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・