中居由美「ふんと金魚ふふんと金魚翻る」(「子規新報」第2巻第106号より)・・


 「子規新報」第2巻第106号(創風社出版・子規新報編集部)、特集は「中居由美の俳句」、中居由美30句の抄出は小西昭夫。寺村通信・小西昭夫の対談「中居由美の俳句」には、


小西 ぼくの俳句仲間は大抵の人がぼくより俳句がお上手ですが、その中でも中居由美さんはピカピカに上手な方です。十七文字の俳句のリズムをしっかり身に付けていらっしゃいます。だからといって、古い感じは全くしません。多く俳句は日常に根差していますが、ごく自然体で新しい世界を開いて見せてくれます。(中略)

寺村 年譜を見ますと、中居さんは一九五八年のお生まれですね。宇和町で俳句を始められ、松山に戻られて夏井いつきさんのカルチャー教室を受講されています。その後、坪内さんの「船団」に参加されたのですね。(中略)

小西 相変わらず平明で軽やかな句は健在ですが、平明さの中に深さを感じさせる句も増えています。

  階段の上の階段春隣

  せりなずな南斜面に仏の座

などそうですね。それから、ユーモアのある句も増えています。紙幅の都合で一句だけしか上げられませんが、

  道徳心ありあんまんに肉まんに

 はぼくの一番の愛唱句です。 


 とあった。他に、連載に、三宅やよい「動物アラカルト28 猿」、大廣典子「子規の風・子規からの風 83/子規の絵75」、神野紗希「俳句の技巧/第65回 意識の流れ④」、福田安典「続 驚きのえひめ古典史89 伊予の短冊収集」、宇田川寛之「となりの芝生ー短歌の現在188」、わたなべじゅんこ「母屋のひさしー俳句史の風景ー181」、森原直子「遠くの親戚ー現代詩への誘いー88」、堀本吟「近くの他人ー現代川柳論ー157」、青木亮人「時のうつろい、句の響き40/花蓮の林田村(下)、世良和夫「俳句こぼれ話56」など。ともあれ、本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  今日虹を見たこと草を踏んだこと      中居由美

  青空を歩く職人花の昼           池田 毬

  花芽葉芽握り拳の生命線         川島由紀子

  ブランコに座れなければ大人です   キム・チャンヒ

  末黒野の夜明けアーサークラーク忌      恋 衣

  龍天に登るこの世をはみ出して       小西昭夫

  ままごとのプリンかがやく春の土      杉山久子

  新年へ中学校の時計台           東 英幸

  ねえねえとそこ行く人に花ミモザ      陽山陽子

  少年が水深測る春の海          武馬久仁裕

  にはとりに鶏冠のきざす日永かな      星野早苗

  早春の千手観音解体図          松永みよこ



     撮影・中西ひろ美「乏月やピーマンパプリカ胸騒ぎ」↑

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