北大路翼「キャバ嬢と見てゐるライバル店の火事」(「牧」2025年夏号 NO.22より)・・


 「牧」2025年夏号 NO.22(牧の会)、「木村晋介の編集長対談/北大路翼の巻 最終回」の中に、


木村 二〇二二年十月、アウトロー俳句の拠点歌舞伎町にあった「屍派」を解散、その翌月には、「天使の涎」を設立、その溜まり場として高円寺に「俳句サロンりぼん」を開設となるわけですね。(中略)

木村 定款には「新しい時代が生れた瞬間を世界と共有する」とあります。デジタル時代の座の文芸ということですかね。(中略)

檀 ハイブリッドで句会を運営することで、遠方の人も同じレベルで参加できますし、YouTubeでライブ配信することもできる。

翼 病床から投句してくる会員もいます。それと、ヴァ―チャルリアリティ句会も始めています。僕も初めて参加しましたけど、ゴーグルつけて仮想空間の吟行もできます。

木村 定款に人間の探求とありますね。

翼 僕は人間探求派の生き残りだからね。楸邨イズムの正統伝承者だと勝手に思ってます。(中略)人間探求派の継承は、同時に、立川談志の「業の肯定」の承継でもあるんです。(中略)そして談志は最終的にはナンセンスにいきついた。だから俳句も、もっとどんどんナンセンスな方に行けばいいと思ってる。センスがないとナンセンスがわからない。究極の命題だと思います。(中略)

 僕たちは、季語といわずに季感といっています。歳時記に載っていなくても、句の全体のj雰囲気からして、季節感があればそれでOKということで。


 とあった。他に第一回「『牧』俳句コンクール」の発表があり、「牧賞」には、小泉瀬衣子「地球ご」、奨励賞に庄子紅子「いつか月に」、田中秋明「光と影」、佳作に高鍋眞木子「大地の恵み」、波切虹洋「日向ぼこ」、深江久美子「戯言の日々」が選ばれている。


  地球ごと壊してしまへ西瓜割        小泉瀬衣子

  いつか月になりたき水母発光す        庄子紅子

  あまつぶの光をならべ冬木の芽        田中秋明

  白菜や割かれて息を吹き返す        高鍋眞木子

  にんげんを壊してしまふほど長閑       波切虹洋

  トランプもプーチンも着るコート      深江久美子


 巻頭エッセイは仲寒蟬「大牧広の昭和・平成21/『正眼』」。さらに田中秋明「季語を旅する9/『涼し』」など。ともあれ、本誌本号より、くつかの句を挙げておこう。


  飛べること隠して亀の鳴きにけり       仲 寒蟬

  洗ひ髪神威岬に吹かれつつ          櫂未知子

  朝風呂に樟脳舟のよく疾る          尾形道夫 

  土塊はいくさの遺品梯梧の花         安村和義

  芭蕉布を着て島をすて墓をすて        早川信之

  妻ですか虹の水替へしてをります       木村晋介

  稲妻を通した針が見えぬ夜          玉田 凪

  読み聞かせの飛び出す絵本初燕       奥野こみち

  国会はディサービスか目借時         溝川心斎

  建国日無思想長寿無神論           大部哲也

  蜜豆に玉あり珊瑚水晶も           能城 檀

  御神籤は末吉なれど二重虹          阿部れい

  炎昼に蒸発したる人の影           辻 和子

  すっきやねん猫と桜に時間さく        髙橋秋湖

  憲法記念日たしかに棄てし武器なるも     関根道豊 



    撮影・中西ひろ美「蜘蛛墜ちて食うか食われるかの遭遇」↑

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