中村安伸「よきパズル解くかに虎の夜食かな」(「新・黎明俳壇」第13号より)・・
「新・黎明俳壇」第13号(黎明書房)、特集は「気鋭の俳人10人が鑑賞!/正岡子規、最後の1年の俳句を読む」。「俳句は、最晩年の随筆集『仰臥漫録(ぎょうがまんろく』『病状六尺(びょうじょうろくしゃく)』(共に岩波文庫)のニ著から武馬が20句選び、各2句を現代気鋭の俳人10人に観賞していただきました。どうぞ、お楽しみください。(武馬久仁裕)」とある。執筆陣は、かわばたけんいち・小枝恵美子・なつはづき・川嶋ぱんだ・山科希・村山恭子・岡村知昭・二村典子・川島由紀子・大西美優。
ブログタイトルにした中村安伸「よきパズル解くかに虎の夜食かな」の句は、田中信克「名句再発見/中村安伸―—虎の夜食」からのもの。その中に、
謎めいてユーモラス。そしてどこかに哀しみも漂う、不思議な味わいの作品です。
まずこの虎の表情が面白いと思います。パズルを解く時のような思案顔。味を楽しむ満足気な顔。肉塊に齧り付く獰猛な顔。三つの貌が同居した獣が、夜の檻の中で孤独な食事を続けています。作者はそんな虎の姿に、ふと自分の生活と気持ちを重ねたのかもしれません。
この「パズル」のピースは動物の骨でしょう。肉が剥された骨が散らばっています。虎はそれらを眺めつつ、食べてしまった動物の元の姿に骨格標本を組み直そうとしているかのようです。(中略)
作者の中村さんは現代の俳句界にあって、旺盛な創作活動を展開する『豈』の同人です。繊細な感覚とユーモアやインパクトのある作品で読者を魅了し続けています。私の一推しの作家です。
とあった。ともあれ、本誌本号より、アトランダムになるが、いくつかの句を挙げておこう。
唐突に朱雀門なり青田道 向瀬美音
思い出を常温にして桃を剥く なつはづき
ドローンに見下ろされゐる秋思かな 杉山久子
モーニング・メニューを見つつ秋の風 梨地ことこ(第48回「黎明俳壇」特選)
秋風にまだいけますよとかき氷 井上秀子( 〃 ユーモア賞)
病窓を外から眺む師走かな 水越晴子(第49回「黎明俳壇」特選)
馬鹿野郎オレオレ詐欺の初電話 海神瑠珂( 〃 ユーモア賞)
冬銀河渦巻くコイン・ランドリー 武馬久仁裕
撮影・芽夢野うのき「だからといって緋桃は白くなりたがる」↑
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