細谷源二「鳥泣きながら木のてっぺんの木の旅行」(「ペガサス」第22号より)・・
「ペガサス」第22号(代表・羽村美和子)、「雑考つれづれ」は瀬戸優理子「細谷源二~生きるための俳句⑥」で完結編。その中に、
(前略)ただ、問題はその詩的工夫の方法である。定型詩である俳句の場合、詩的肉付けは言葉を足したり引きのばしたりするのでなく、精選した言葉の凝縮によって密度を高める方向へ向かうのが通常である。だが、庶民の詩として俳句の口語化を進める源二は逆方向へ進んだ。すなわち、定型に合せて無理に音数を縮めず、発想の内面韻律や声調の美しさを優先して一句の詩性を高めようとしたのだ。
具体的に句をみていこう。
寒い柱に凭れたが寒い心を拾つただけ
夕餉目刺をみんなで分けて祈らず食う
とあった。ともあれ、本号より、いくつかの句を挙げておこう。
いつの間に違ふ小石を蹴る日永 伊藤左知子
春朧ひとり遅れてバスに乗る 伊与田すみ
牡丹雪楽譜を読まぬ子のように F よしと
母が縫い吾が縫いふきん日足伸ぶ 小川裕子
花八つ手白き光の中にあり きなこ
肩貸します張り紙ひとつ牡丹雪 木下小町
鶴帰る白いクレヨン折れたまま 坂本眞紅
桜舞う街はアルカイックスマイル 篠田京子
少女期を漂白されし雛の顔 瀬戸優理子
亡国の民の銃後の朧かな 高畠葉子
春の雪ヒジャブの少女駆け出した 田中 勲
三寒四温変換キーを押してみる 中村冬美
徴兵に神の枠ある月夜茸 羽村美和子
能登は沖まで慟哭の余寒なり 水口圭子
梅一輪あなたのことはまだ待てる 陸野良美
代り映えする明日を下さい吾亦紅 浅野文子
ピカソシャガール岡本太郎福笑 東 國人
Wokeの蛇穴を出て議事堂へ 石井恭平
塒へとロールシャッハな春の泥 石井美髯
★閑話休題・・森須蘭「行間を空けて下さい立春です」(自由句会誌「祭演」71号)・・
自由句会誌「祭演」71号(ムニ工房)、本号より、「豈」同人の方々の句を中心に、いくつか挙げておこう。
昭和の日錆びついているフライパン 川崎果連
一月の底をきれいにする仕事 杉本青三郎
しりとりに上手に負けて金魚です 成宮 颯
十字架とりっしんべんと竹春と 浜脇不如帰
自由ってかなり凸凹ラ・フランス 水口圭子
病葉のぽとり限界集落へ 東 國人
行き先は鉄塔らしい紅の色 伊東裕起
撮影・鈴木純一「さびしさは八分ときめて山桜」↑
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