坂本登「鳥おどし音も光もごちやまぜに」(『松の位置』)・・
坂本登第一句集『松の位置』(ふらんす堂)、跋は、しなだしん。それには、
(前略)登さんとの交流は、二十余年になる。登さんは昭和二十六年生まれで、筆者より十一年上だが、これまでに最も多くの句座を共にし、最も多くの酒席を共にした俳人である。(中略)
さて、登さんの俳句は「蘭」の抒情性を汲みつつ、幅広い経験、知見が盛り込まれた作風。一方で、いわば庶民的な視線で、身辺の機微を掬い、人間の細かな仕草や場面を切取る巧みさも併せ持つ。
とあり、著者「あとがき」には、
職場句会から始まった私の句歴は五十年近くになるが、『松の位置』は恥ずかしながら私の第一句集である。
句集名は次の句から採った。
松の位置気になつてきし雪見酒
本句集には、二〇一四年以降「OPUS」他に発表した句と二〇一三年以前に詠んだ句から自選した四百句余りを収めた。
とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。
名園に咲いてヂゴクノカマノフタ 登
逆上がりして春愁を忘れけり
職安の上に労基署梅ひらく
式次第なき春の夜の家族葬
ブータンは幸せの国ところてん
長き夜や亡き人ばかり出る映画
宝くじ誰かに当たる寒さかな
水やれば風おづおづと胡瓜苗
木の股にはうきちりとり神の旅
言の葉は未生のままに雪となる
花冷の頃の葉書は濡れて来る
豆飯をよろこび祖母をよろこばす
二人抜けすこし小さく踊の輪
飯場閉づ轍と草の花残し
蓮根掘る荒ぶるホースなだめては
ペーチカの燃えて魁夷の白き馬
どんど火の照らす此岸の人ばかり
坂本登(さかもと・のぼる) 1951年、和歌山県生まれ。
★閑話休題・・藤原暢子写真展「北へⅨーポルトガルの村祭ー」(於:フリースペース緑壱)2025年4月16日(水)~27日(日)、13:00~19:00、最終日17時まで(休廊日:月・火)・・
藤原暢子写真展に、両国まで出掛けた。葉書の案内には、
2015年より「北へ」と題し、以後はポルトガル北部の村祭に主題を絞り、年一回のペースで写真展を開催。今回は北東山間部アヴェレーダ村とヴァルジェ村、隣り合う二つの村の冬至祭を取り上げる。同地方には、キリスト教由来ではない古来の祭礼が多く残っている。村の青年達は仮面を被り、色とりどりの衣装を身につけ、村中の家を回る。村の人々を繋ぎ、祭の力で寒い冬を越す、青年達の姿を紹介したい。
とあった。藤原暢子は俳人でもあり、すでに、『からだから』(文學の森)と『息の』(同前)の二冊の句集がある。
撮影・中西ひろ美「アイリスの真ん中は暗がり心地」↑
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