田中目八「鏡騒白桃にこゑ浸しては」(「We」第19号)・・
俳句短歌誌「We」第19号(俳句短歌We社)、エッセイ、俳句、短歌、評論など記事満載の同人誌。なかでも、愚生と同じ「豈」同人でもある酒巻英一郎「前号斎藤秀雄作品『最後から二番目の卵』を読む/類推の魔」に眼が止まった。その中に、
(前略)さて「最後から二番目の卵」五十句の詩的言語のある種の難解さとは、それが啓蒙の対極、読み手の淘汰に位置してゐるのも関はらず、本質的に啓蒙的であるといふ点にある。この矛盾律を作品自体がいかに止揚するのか。一見閉ぢられてゐるかに思はれる言語は、未知の読者に全面的に開放されてゐる。
五十句の任意どの一句でも構はない。一句突破全面展開、いや信じ詰めれば一語突破、一音突破全面展開の言語的戦略gさ繰り広げられる。その戦略とは何か。一言すれば、類推なる詩的機能の開示にある。(中略)
けむりの木日の裏を鳥立ち込める
単語は、けむりの木、日、裏、鳥の体言。用言として立ち込める(動詞)と、の(連体助詞)を(格助詞)の助詞。わづかに表情が読みとれるのは立ち込めるのみ。日と裏は連体修飾語として日と裏との合成語となる。けむりの木は英名スモークツリー、和名煙の木。鳥唯一、この句において主体を装はされ陽動として立ち込め、立ち込めさせられる。ふつう立ち込めるとは霧や烟が辺り一面に籠もる、充満する状態を言ふのだが、鳥立ち込めるとの用法にはすぐれて詩的な弾力がある。(中略)あたかもけむりがけむりの木から立ち上るやうに、天日を蔽ひ、さらに鳥を偏在させ封印する。
とあった。ともあれ、本誌よりいくつかの作品を挙げておきたい。
真白き腿に頽れ冬薔薇 松永みよこ
炎天や囚人護送車通り過ぐ 籾田ゆうこ
たましひに鬼がいすわる師走かな 森さかえ
プール出で二足歩行のマーメイド 内野多恵子
ふるさとは不易流行蛙跳ぶ 江良 修
火恋し 身巾身丈に立禅す 小田桐妙女
影踏みにときどき交じる魚の影 男波弘志
幾人のおのれのかげや花野ゆく 加能雅臣
思い切り泣きたいときに母カレー 貴田雄介
水曲げて善知鳥のみちを不断香 斎藤秀雄
本来無一物風の秋遍路 島松 岳
泣くとこじゃないのに冬茜 竹本 仰
生家二百歳ときに冬の土を吐く 林よしこ
この奥が空です晴れていませんが しまもと莱浮
小春日古墳わさんたらんかすりらんか 加藤知子
他に、関悦史「破局有情―—加藤知子句集『情死一擲』について」。
★閑話休題・・大井恒行「海山の谷の口なり春盛」(谷口智行君の俳人協会賞を祝う会/主催・運河俳句会)・・
昨夕、3月17日(月)は、新宿・京王プラザホテルに於いて、俳人協会総会が行われ、第64回俳人協会賞受賞の谷口智行第4句集『海山』(邑書林)の受賞式懇親会の後、祝う会が行われた。久しぶりに,司会をしていた島田牙城にも会った。前段での受賞式が行われた評論賞の小川軽舟も最後に顔をみせた。俳人協会賞選考委員の小澤實、中原道夫、森賀まりなども。高山れおな、筑紫磐井、飯田冬眞ら「豈」同人の面々、その他、旧知の方々、若い俳人諸氏にも会えた。楽しく過ごさせていただいた。因みに俳人協会の新会長に初めての女性会長・片山由美子が誕生した、と聞いた。
愚生の句は、チェキで撮った写真に、何か一言を書け、と命じられて、詠み込みで祝の句を献じたもの。
芽夢野うのき「ひさかたのひかりひがんへさくらかな」↑
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