宮﨑裕「断捨離の筈が読書じゃゲゲゲの忌」(「花林花 2025」vol.19より)・・

 

「花林花 2025」vol.19(花林花俳句会)、「花林花の作家 その13」は、宮﨑裕(1950年、東京都港区生まれ)。内容は宮﨑裕自選100句と各同人の一句鑑賞、作家論として髙澤晶子「鶏に葱」。俳人研究は「与謝蕪村」。ともあれ、以下に一人一句を挙げておきたい。


  空を抱く歓喜は秋の陽射しより       高澤晶子

  ガスの火のつつがなき色文化の日      廣澤田を

  鬱々と『1984』夏の夜         榎並潤子

  夏みかんぶらさげられている孤独      石田歩乱

  後ろから目隠しされたりする四月      金井銀井

  戦雲(いくさぐも)垂れ込めて憂し沖縄忌  島袋時子

  (くう)に空重ねて芒そよぎけり     鈴木光影

  ひとりゐて人とゐるかに冬すみれ      福田淑子

  沈丁花ポスト空っぽ日曜日         宮﨑 裕

  貼紙に火気厳禁の氷室かな         杉山一陽

  秋高しムーンストーンの犬がいる      石井恭平

  片蔭に薄幸のふりして潜む         米山恵子

  片脚の鳩がついばむヒロシマ忌       内藤都望



★閑話休題・・山内将史「弟の肩に兄の掌春の星」(「山猫便り/二〇二五年二月二十日」)・・


「山猫便り」は、山内将史の葉書通信。それには、


  蜘蛛動くあしがピアノを弾くごとく  松葉久美子『屋根を飛ぶ恋人』

「観念的な言い方をすれば、切り込みが深いね松葉は。ぼくは大いに買ってます」と星野石雀に言わしめた果断さは健在。放射状の蜘蛛の巣の縦糸は粘らない。ピアニストの指のように慎重に野蛮に動く。


 とあった。


     撮影・中西ひろ美「実よりも虚が生き生きと春の雪」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

秦夕美「また雪の闇へくり出す言葉かな」(第4次「豈」通巻67号より)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・