上田玄「撃チテシ止マム/父ヲ//父ハ」(「鬣 TATEGAMI」第94号より)・・


 「鬣 TATEGAMI」第94号(鬣の会)、その編集後記(外山一機記)に、


 (前略)前号特集「俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進の現在」をとりあげた。前号では林桂の提言をもとに大井恒行氏、堀田季何氏より御寄稿をいただいた。福田氏はまず提言に事実誤認が見られることをふまえ、前号の議論が不首尾に終わったと指摘している。同時に大井氏のいう「離脱せよ」との主張にも異議を唱える。さらには誤解を解こうとするばかりの堀田氏が肝心の林の問いに答えていないとも述べる。三者の嚙み合わない要因が浮き彫りになったかたちだ。一方の堀込学は林・大井両氏に共通する懸念を、すなわち今回の推進運動に現俳が参加することにより「伝統俳句」的価値観が膨張することへの危惧があるとする。堀田氏については現俳の組織体制への批判がある一方で、提議にある論点に対峙していないこと、くわえて、数年前の主張からの奇妙な変節について指摘している。前号批評のなかで深代響、西躰かずよしが、エッセイで林がこの前号特集についてそれぞれの見解を示している。こちらも併せてお読みいただきたい。それにしても、本誌以外にこの問題に触れる俳誌をあまり見かけないのは不可解である。


 とあった。本ブログでは、紹介しきれない分量なので、本特集「『俳句ユネスコ無形文化遺産登録』推進の現在を読んで」の福田若之「不首尾の理由、その他」、堀込学「前号特集【俳句ユネスコ無形文化遺産登録】推進の現在』についての所感」、林桂「提議しなおします」と深代響、西躰かずよしを「併せてお読みいただきたい」と記されているように、興味を持たれた方は、是非、本誌に直接あたられたい。他の特集には、「アンソロジー俳句史」。連載に「上田玄の遺稿『白泉各句一・二」など。因みに、第23回「鬣 TATEGAMI賞」発表で、愚生の『水月伝』を選んでいただき深謝です!!(内心では、もっともいただきたい賞でしたので・・・)。

 ともあれ、以下に、本誌よりいくつかの句を挙げておこう。


  いつかなんて何時(いつ)だよくれなゐ      堀込 学 

  クリスマス琉球は今雨らしき           堀越胡流

  冬菊や通行止めに立つ仕事           齋木ゆきこ

  T字路の「止まれ」塗り立て風花す         佐藤裕子

  白息のキリエ梢はふれ合わず          加那屋こあ

  鱘魚を覗く時雨の傘二つ             大橋弘典

  抱き締めたくて叫ぶペンギン           永井一時

  きみと死と同じかなしみ足らなくては       外山一機

  彼岸花から飛び石続きをり            九里順子

  冬すみれ夢は蝶々に触れること          佐藤清美

  ひらめきのかわりに降ってきた木の葉       青木澄江

  蓴菜(ぬなわ)沼なのらぬままにひとだまは    後藤貴子

  

  (わか)れ来(き)

  車窓(しゃそう)

  (よわ)

  (ひ)を返(かえ)す             中里夏彦 


  ちがふ世の光がすべり返り花          水野真由美 

  

  ひさかたの

  信濃(しなの)

  花野(はなの)

  金(きん)の斧(おの)             林 桂

    

  長廊を

  死の

  婚礼の

  月光ドレス                  深代 響


  年の瀬の変わらぬ情や一茶の句         樽見 博

  (さ)び枝折細身(しをりほそみ)寒夜のジャコメッテイ

                         井口時男

  「ぐりとぐら」口のまわらぬ読始         蕁 麻

  信じてみようかこの玉葱を使ふ人      吉野わとすん 

 


    撮影・芽夢野うのき「春の日の後ろにまわるはいつも母」↑

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