高松霞「しゃぼん玉ひとつを吹いて空に明日」(『躁うつでもなんとか生きてます。~俳句と私が転がりながら歩むまで~』より)・・
原案・高松霞/作画・桜田洋著『躁うつでもなんとか生きてます。~俳句と私が転がりながら歩むまで~』(KADOKAWA)、その「はじめに」に、
はじめまして。/ライターで連句人の高松霞です。/私は双極性障害(躁うつ病)という精神疾患を患っています。/元気過剰な「躁」と落ち込みが深すぎる「うつ」を繰り返す、脳の障害です。/本書は「双極性障害」を、文学のの目から見たらどうなるのか?という実験的な作品になっています。(中略)
俳句は、本文と「適度な距離感で寄り添っている」ものを採りました。/解読しなくてもいいし、深読みもしなくて大丈夫。そこに出現する俳句を、なんとなくでも味わっていただければ幸いです。
とあり、高松霞「おわりに」には、
(前略)本書は、たくさんの方々のお力添えがあり制作されたものです。
監修・益田裕介先生/俳句感・松本てふこさん、西川火尖さん/俳句の使用許可をくださった俳人のみなさん/対談をしてくださった松浦秀俊さん/そしてなにより編集担当のOさん、漫画家の桜田洋さん
もうひとつの桜田洋「おわりに」には、
(前略)この漫画を描くにあたり、高松さんの人生とたくさんの美しい俳句が「躁うつ」を抱えて生きている人たち、その人のそばで生きている人たちに、そっと寄り添えるような漫画にしたいと思いました。そして、「躁うつ」とたまたまご縁のなかった人たちには、この病気を知る良いご縁になったらいいなと思いました。
おれ自身、この漫画を通して「躁うつ」に、俳句に触れることができ、色がひとつ増えるような感覚がありました。この色をいつまでも大切にし、そしてこの先描いていくであろう漫画に加えていけるよう精進して参りたいと思います。
とあった。そして最後の益田先生のコラムには、
障害者枠で仕事を探す人が増えています。/障碍者枠の仕事の内容や給料の幅も千差万別で、本当にバラェティ豊かになったなと思います。精神疾患を取り巻く社会福祉サービスは、年々豊かになっており、少しずつですが、生きやすい社会になってきています。
様々な人の願いが形になり、これからも少しずつ、社会は良くなっていくと思うので、悲観的にならずに、どうか焦らず、生き延びてください。
とあった。ともあれ、本書中に引用された俳句をいくつか挙げておこう。
星合の象飾られしまま眠る 西川火尖
錠剤をたくさん持つて遠足に 松本てふこ
人間を絞れば水や藤の花 鳥居真里子
とつくにのひとのあくびとなるなだれ 中村安伸
小鳥きて姉と名乗りぬ飼ひにけり 関 悦史
しりとりは生者のあそび霧氷林 岩田 奎
てざわりがあじさいをばらばに知る 福田若之
超巨大落椿にて圧死せむ 高山れおな
虫の音や私も入れて私たち 野口る理
桐の花ねむれば届く高さとも 髙柳克弘
はつ雪や紙をさはつたまま眠る 宮本佳世乃
天の川星踏み鳴らしつつ渡る 生駒大祐
日の窓の一つかがやき初氷 森賀まり
地図になき島に着きたる魂祭 高松 霞
静まればこちらの岸で蝶となる 〃
靴擦れが自己主張する夏の果て 〃
散らかったままのキッチン星の降る 〃
飛花落花宝探しを遠慮する 〃
高松霞(たかまつ・かすみ) 連句人。双極性障害Ⅱ型当事者。2021年より門野優と立ち上げた連句総合サイト「連句新聞」を運営。
桜田洋(さくらだ・よう) 夫と子と犬と猫と暮らしながら、家族の日常のマンガをSNSで更新している。
撮影・鈴木純一「鷹けして鳩となるまじ皆ごろし」↑

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