坪内稔典「桜散るあなたも河馬になりなさい」(『河馬100句』より)・・


  坪内稔典句集『河馬100句』(シンラ 象の森書房)、カバーイラスト・米津イサム/挿絵・内藤美穂。帯には、


 ここに100頭の河馬がいる。/面白い河馬、哀しい河馬、おしゃれな河馬、楽しい河馬・・

 どれもネンテン先生の起きに入りの河馬である。


 とあり、また、「あとがき」には、


 (前略)この句集『河馬100句』は、ボクの河馬への思い、あるいは河馬から受けた刺激を起点にして、ボクと河馬のいる風景を五七五の言葉で表現したものだ。別の言い方をすれば、ボクと河馬のいる〈五七五による百枚の絵〉だ。読者の方が気に入りの絵を一枚でも見つけてくれたら作者としてはとても嬉しい。(中略)

 最後になったが、版元の松山たかしさんとは大学時代に知り合った。ボク等は大学生協の食堂の皿洗い仲間だった。その彼を俳句に引きずりこんだのは多分ボクである。彼は広告業界で活躍し、定年退職後に象の森書房を設立した。この書房、俳句専門の出版社ではないが、彼は自身の晩年の仕事としてかなり俳句にのめり込んできているように見える。その彼にあおられるあたちでこの『河馬100句』が実現した。


 とあった。ともあれ、本書より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。


  ツツパッパカバはカバ語を生きて春      稔典

  春暁のくるくる動くカバの耳

  カバ浮いて春の地球がやや軽い

  九月来て固まるものにカバと意地

  文旦とカバとあんパンそしてオレ

  桜咲くピカソはカバと不和である

  カバの目の漆黒が澄む水が澄む

  一月のカバ逆立ちをしたいカバ

  七月の水のかたまりだろうカバ

  河馬のあの一頭がわれ桜散る

  河馬へ行くその道々の風車

  河馬になる老人が好き秋日和

  水中の河馬が燃えます牡丹雪

  

 坪内稔典(つぼうち・ねんてん) 1944年、愛媛県佐田岬半島生まれ。



★閑話休題・・現代俳句協会青年部第183回勉強会・来る4月5日(土)午後1時~「大井恒行に聞く」・・・

第183回勉強会 「現代俳句の伴走者 大井恒行氏に聞く」

【企画概要】

現代俳句協会会員・「豈」編集顧問の大井恒行のブログ「大井恒行の日日彼是・続」は、日本一、二を争う更新頻度と速さで、現代俳句関連書籍を紹介しています。

https://testusuizu.blogspot.com/

そのアーカイブスにアクセスすることで、私たちはあらゆる傾向の現代俳句に触れ、

種々の問題を立ち上がらせることが可能です。

しかし、それが大井氏の顔の一つでしかないことは、2024年に刊行された大井恒行第四句集『水月伝』のⅢ章が昭和・平成俳句を支えた俳人たちの追悼句のみで構成されていることからも明らかです。


悼 中村苑子(二〇〇一年一月五日・享年八七)

切り抜きは重信の記事桃遊び


悼 上田玄(二〇二三年一二月三〇日・享年七八)

「鮟鱇口碑」肌に彫りたるぞうはんゆうり


大井氏の哀悼の意は、俳人たちの功績に対するリスペクトが含まれています。

追悼句から見えてくる大井の俳人の評価や印象をさらに伺い、

青年部世代がリアルに体感することのできない時代の印象を少しでも身近にできる機会にしたいと思います。


青年部の先輩であり現代俳句を見続けてきた大井氏に、

新たな俳句史の記述と伝承の場として、追悼句を起点に公開インタビューを行います。


【登壇者】

大井恒行(「豈」) 

聞き手:黒岩徳将(青年部長) 、田中惣一郎(「ばしりを通信」

【場所】
現代俳句協会事務所(※オンラインアーカイブ視聴も募集)

東京都千代田区外神田6-5-4偕楽ビル(外神田)7階



  撮影・中西ひろ美「ここで食べましょうと円(まどか)なる日」↑

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