中原道夫「十七年も経つ裕明の草おぼろ」(「銀化」2025年3月号)・・


 「銀化」3月号(銀化の会)、先般、谷口智行句集『海山』(邑書林)の俳人協会賞受賞お祝いの会(於:京王プラザホテル)の折り、中原道夫に撮っていただいた写真2葉をざわざ送って頂いた。深謝!!同封されていた「銀化」2月号と3月号、先日、俳句文学館で手に取ったとき、巻頭の中原道夫「駄句再再」77句に驚いたばかりだったが、どうやら、毎月77句を発表しているらしい。愚生が発表する10年分くらいの句を、毎月掲載しているのだ。しかも、下段にはエッセイが収められている。その一節に、一時期は「豈」同人であった岸本マチ子について、


(前略)以前行った時には俳人の岸本マチ子さん(首里金城町に在住)に連絡した処、琉球舞踊付きの酒席の接待を受けたことを思い出した。その岸本マチ子さんが数年前に亡くなっていたということを、最近戴いた大井恒行氏の句集で知った。確か岸本さんは出身は群馬で沖縄へ嫁いだのではなかったか?現代詩もやっていて、30年以上昔、詩人の宋左近さんのやっていた宮城県加美郡中新田の「現代詩の噴火際」で会ったのが、最初だった。


 とあった。ともあれ、本誌、本号より、アトランダムになるが、いくつかの句を挙げておこう。


  うらにして表に返す落椿             中原道夫

  青白き顔して霜夜ともなりぬ           加藤哲也

  日の暮を待たぬ独酌年の暮            亀田憲壱

  白鳥の闇に紛るる色持たず             菅 敦

  魂のかたはれを呼ぶ梟よ             柴田奈美

  寝の土をとること頻りきりたんぽ         潮田幸司

  猿回し万歳すれば腋さびし            高木宇大

  白鳥と白鷺近し無視し合ふ            田口 武

  とつくりの首に金継ぎ由紀夫の忌         中村堯子

  老犬に足嗅がれゐるクリスマス          橋本喜夫

  これしきの葱を袋に立たせ得ず          東 麗子

  無口なりお釣りきつちりもろこ売         平石和美

  大いなる年の舳先を初日の出          松王かをり

  蓮枯れて一望監視施設(パノプティコン)の遠響  彌栄裕樹

  クリスマスソング二人とも曖昧          水口佳子

  荒星や爪を切られし指さびし           峯尾文世

  蹲る背に寒灯の刃かな              飯島士朗

  着膨れや顎をざらりと襟の擦る          大西主計

  闇汁に妻も一枚嚙んでをり            宮岸羽合

  冬眠の蛇塒とも塒とも            長谷川はるか

  マフラーを齢にしかと巻きて出ず         若林由子

  蕎麦掻きや疾うに世になきひと思ふ        田島実桐



      撮影・芽夢野うのき「身をそらすラジオ体操花一匁」↑

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