彌榮浩樹「つくりたて哉熱熱の雪だるま」(『トリガー・ハニー/鉄爪蜂蜜』)・・

 

 彌榮浩樹第二句集『トリガー・ハニー(鉄爪蜂蜜)』(ふらんす堂)、著者「あとがき」に、


 第二句集『トリガー・ハニー 鉄爪蜂蜜』を上梓します。(中略)

 収めた三百句は、どれも(生活の俳句化)の積み重ねから生まれてきたものです。日常生活で出会う凡事が有季定型のかたちに(無理矢理)嵌め込まれることで、「なんじゃこりゃ?」と居心地悪い感触を纏う不思議なイメージとして立ち現れる。これが僕にとっての俳句(・・・・・・・・)です。慧眼の皆さんに、多様に読み解き、多彩に楽しんでいただきたい、と願っています。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下に、いくつかの句を挙げておきたい。


  虫鳥の白梅潜遊(はくばいもぐりあそび)かな    浩樹  

  女湯をすべる少年ゆふひばり

  源五郎サンダーバードなら2号

  くちびるが顔ほど腫れてくわとのひも

  青春のコードのねずみ花火かな

  どの鳥も宙吊りにして山眠る

  ハチミツをツミチハにして雪催

  父だけに見ゆる春服のをばさん

  蝌蚪のひも運動競技(スポーツ)なのか愛なのか

  永き日のわかめうどんに終はる旅

  太陽の塔のくちびる滑莧

  ピーマンの奥のくれなゐ初嵐

  ゐのこづち不忍口で待つてゐる

  はなみづをまだこぼさずに花屋にゐ


 彌榮浩樹(みえ・こうき) 1965年、鹿児島県生まれ。



★閑話休題・・井上芳子「春の別れ古い障子の破れ穴」(第39回「きすげ句会」)・・


 本日、3月20日(木)は、第39回「きすげ句会」(於:府中市生涯学習センター)だった。兼題は「石」。本日より、新会員の新宅秀則が初参加の句会、新しい人が加入するとそれだけで、活気づくから不思議だ。以下に一人一句を挙げておこう。


  ただただ乱れ乱れて春の雪            寺地千穂

  春蘭や寒さの中のうすみどり           井上芳子

  飾り棚集めた石に旅香る            大庭久美子

  春入日素足の孫のをどりをり           新宅秀則 

  春の鬱吐き出すように小石吐く鯉        久保田和代

  隕石ノ大衝突地球(テラ)二チルサクラ      山川桂子

  雪溶けて環状列石円になる            井谷泰彦

  木耳の嚙めば噛むほど老いの春          杦森松一

  帝劇の石壁に染むㇾ・ミゼラブル         高野芳一

    ウクライナ 花と兵隊

  あかね雲はな一匁兵となる            濱 筆治

  春彼岸吠えるドームに雪が舞う          清水正之

  椅子のかたちの野の石のまろき春         大井恒行


 次回は、4月24日(木) 於:府中市生涯学習センター。兼題は「馬酔木」。



        撮影・中西ひろ美「三月と雪山が混ざり合った日」↑

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