三橋敏雄「絶滅のかの狼を連れ歩く」(「トイ」Vol.14より)・・
「トイ」Vol.14(編集発行人 干場達矢)、各同人が、12句と1ページのエッセイを寄せている。干場達矢は、その「ルサンチマン」で、
(前略)兜太といえば引っかかっている句がある。かの〈銀行員ら朝より蛍光す烏賊のごとく〉だ。日銀に勤めていた人で、見ていた景を書いている。(中略)
兜太のこの句はつまるところ倒置法で書かれた文章で、作者のルサンチマンが強調されている。そもそもオフィスにやってきた勤め人たちが卓上のスタンドを次々点灯するさまをホタルイカにたとえるのが気がきいているとも私は思わない。
この句が代表作のひとつとされているのが不思議なところだが、洗練された楽曲よりもナマの感情をうたう歌が愛されるのはよくあることだ。芸術至上主義的な詩歌は愛唱されない。
兜太はそのことをわかっていた気がする。
とあった。ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。
この道をとほること減りゐのこづち 青木空知
手拍子のやがて朧となりぬべし 干場達矢
寒鴉来て水道の水を飲む 仁平 勝
悪縁のいちばん好きなミックスジュース 樋口由紀子
夕日仄白しうっかりメランコリー 池田澄子
★閑話休題・・造本作家・佐藤りえ「文芸豆本 ぽっぺん堂」(於:ホテル雅叙園東京・ミニチュア×百段階段)~3月9日(日)11時~18時まで。・・
案内チラシには、「ミニチュアは各時代・各地域で人々の傍らで愛されてきまあいた。現実で見慣れたmのがちいさなスケールで出現することの面白さや精巧な技術と遊び心にあふれた世界を隅々まで観察すること、それを愛玩することの魅力は、時代や国を越えて人を惹きつけるものであると言えるでしょう。
本展では、文化財『百段階段』の7部屋を舞台に、さまざまなジャンルや技法、感性によって創り出される“ちいさな世界“が出現します。(中略)文化財の中にもう一つの『ちいさな日本』が広がります」とあった。
予想以上に人気があって、長い行列、一時間の待ち時間を費やして、観た(百段階段と各部屋はそれでもゆったり見られる)。一見の価値ありです。佐藤りえの豆本コーナー―は最初の部屋にあったので、有難くゆっくり見ることができた。
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