志賀康「まどろみに蝶の闘い激しかれ」(「俳句界」2025年3月号)・・



 「俳句界」3月号(文學の森・2月25日発売)、特集は「句に刻まれた師系を語る」。執筆陣は、井上泰至「俳句の中の『師系』」、矢野景一「教えてならぬもの」、江見悦子「温故知新」、淵脇護「叙情詩としての俳句にひかれてー斬新なもどき芸ー」、阪西敦子「居続けの顛末」、髙田正子「伏流水のごとく」、守屋明俊「鍵和田門に草鞋を脱ぎ」、草深昌子「ダイナミック」、長谷川槙子「『しだれざくら』と『木の実』を仰いで」。

  もう一つの特集は「心を揺さぶられた俳句」。執筆陣は奥田好子・中西夕紀・矢作十志夫・手拝裕任・中内亮玄・西生ゆかり。ともあれ。本誌本号の中からいくつかの句を挙げておこう。


  ものの芽のみん産濡れのごとくかな      横澤放川

  地虫でづどこも神の地仏の地        古賀しぐれ

  草原の風に祓はれ春の駒           檜林弘一

  野牛(のうし)行くありきあらずと唱えつつ  志賀 康

  朽ちかけの蛇籠を抜けて寒の水        染谷秀雄

  流星を数ふ眼の青むまで           髙田正子

  鶏頭の脈を取らせてもらひけり        守屋明俊

  奥津城のひかは春田でありにけり       草深昌子

  雛の間に大海原の光かな          長谷川槙子

  生きてゆく僕の追い焚き秋土用        市原正直

  遠隔会議画面顔顔朧             相子智恵

  キャッチボール斜めに春野使ひけり      沼尾將之

  叱られて顔まで潜る春炬燵          中本真人

  あつけなく一人となりぬ夕雉子       石地まゆみ

  囀や赤子も我も舌をもち           加川幸江

  一羽翔つ音に万羽の鳥かえる         里村里邨

  巾着の中こまごまと花疲れ          東あふひ

  葦の角萌ゆ水泡の消ゆるたび         南 悦子

  ライオンの檻にすずめの来る小春       原 清香

  陽炎や不動裂帛(れっぱく)乱拍子      米田よし

  


      撮影・鈴木純一「梅一輪わが家たずねるひとがいて」↑

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