もてきまり「可燃性二十歳のころの思草」(「俳句新空間」第20号より)・・

 

「俳句新空間」第20号・2025早春(販売・日本プリメックス株式会社)、本号概要hさ新作20句(巳巳帖)31名。その他の記事は「高橋比呂子追悼句」、筑紫磐井評「大井恒行『水月伝』Ⅲより」、「令和五年俳句帖(夏輿帖~冬輿帖)」、もてきまり・小野裕三「前号作品鑑賞」。

 「巳巳帖」より全員は無理なので、ここでは、「豈」同人各一句を以下に挙げておきたい。


  ばらばらにくちすいういてこいこない      加藤知子

  ひとりだつてとんぼかなぶんリビングに     神谷 波

  応じない免許返納建国日            川崎果連

  藪蘭の実に残りたる冬日かな          五島高資

  白孔雀晩夏の風に吹かれいる          坂間恒子

  月の舟無蓋の海へ星こぼす           佐藤りえ

  蓮破れて上野アメ横摩利支天          清水滋生

  その声の高低偲ぶ桃青忌            妹尾 健

  戦争は絶対多数で進みゆく           筑紫磐井

  認識は光! つぶやきしのちに転移する     冨岡和秀

  水澄むや一角獣に声なき声          なつはづき

  一切合切空缶空瓶去年今年           夏木 久

    先島諸島基地群

  静けさや野分南西二千キロ           中島 進

  えぴきゆりあん月光の鵺飼ひ馴らす       中嶋憲武

  御神火を揺り炎ゑ起こす炉心かな        渤海 游

  齧られていし〈戦争〉の書を曝す        堀本 吟

  一穢無き天の底ひへ登高す          眞矢ひろみ

  フズリナのためいき美濃のはつざくら      村山恭子


 以下は、高橋比呂子追悼句より、いくつかを挙げる。


  風果ての書屋の霜や津軽富士          大井恒行

  風果ててやまぐわ紅葉柔らし         妹尾健太郎

  末広を上野に去った夏の人          川名つぎお

  碩学や『風果』の風をスカーフに        早瀬恵子

  産土を滔滔と抱く林檎なり          小湊こぎく

  冬帽子と微笑み遺し消えしまま         山本敏倖

  冬帽子何処へ行こうか何処もない       杉本青三郎

  晴れて寒しよ何処に隠れて比呂子さん      池田澄子  

  ほほえんで去りゆく人や冬の蝶         神山姫余

  美貌の風追って津軽の雪椿          羽村美和子

  軽やかな声のみ残し白鳥逝く          森須 蘭

  ふゆごもりあまのいはやにやすいして      堺谷真人



  撮影・芽夢野うのき「うつらうつら枯れ紫陽花のあっぱれな」↑

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