大木あまり「呼び鈴も核のボタンもあり真冬」(『山猫座』)・・
大木あまり第7句集『山猫座』(ふらんす堂)、その「あとがき」には、
(前略)次の句集は「山猫座」という書名にしよう。その思いを実現すべく、四年前、句集を纏めようとした矢先、新型コロナウイルスが猛威をふるいはじめ、世の中は一変した、コロナ禍は人々から仕事も命も奪い、未だに終息していない。持病のある私は外出せず、不安と閉塞感の日々を送りながら四年が過ぎた。
だが、コロナ禍の中でも季節はめぐってくる。麗しい声で鶯が鳴くと、負けじと小綬鶏が「チョットコイ」と鳴いて応える。実に微笑ましい。タンポポやすみれや二輪草が群生する我が家の庭にも束の間の華やぎが……。
私は家に籠りながら、二〇一五年の新年から二〇二一年の春の句までを収めた第七句集『山猫座』をやっと纏めることができた。あらためて夢や希望や失意を自己表現できる俳句が好きになった。
とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。
湯気が目に猫舌亭の牡丹鍋 あまり
火星近づく朴の木は花かかげ
六月六日
野のばらの棘いきいきと晴子の忌
義母永眠
葛の蔓引けど引けども母はなし
寄鍋の目のあるものを喰うて雨
人間は酷なことして夏の空
柊忌とは母の忌よ蒲団干す
夢の世にただゐるだけや着ぶくれて
帰らざる旅をするなら狼と
炎より人恐ろしと雪女
描きたきは光の柳影の馬
雪の野やここにも罠があつたはず
漣も皺の仲間や鳥帰る
春愁を近づけぬほど眠る君
天使にも悪魔にも編む毛糸帽
花種を蒔くや地球を宥めむと
大木あまり(おおき・あまり) 1941年、東京目白生まれ。
撮影・芽夢野うのき「いつ会えなくなるかも知れぬ寒夜の宴」↑
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