瀧村小奈生「あふれない水でいましょう いよう」(「鬣TATEGAMI」第93号より)・・


 「鬣TATEGAMI」第93号(鬣の会)、特集は「『俳句ユネスコ無形文化遺産』推進の現在と「『群馬百人一句α』林桂編」。「ユネスコ無形文化遺産登録」についての論考は、林桂「提議再び」、大井恒行「現代俳句協会は、俳句ユネスコ文化遺産登録推進協議会から離脱せよ」、堀田季何「提議しなおしてほしい」である。興味を持たれた方は、直接、本誌本号に当たられたい(鬣ホームページでは、過去の号についての論考ななど、すべて公開されている。本件に関する最初の提議は、第64号。2017年・8月刊)。最近、愚生が聞き及んでいるところでは、現代俳句協会は、「現代俳句」2025年1月号で、この運動についての経過説明を掲載するという。他に、注目の連載に深代響「上田玄の遺稿『白泉各句一・二』」/「掲載について(経緯)」。

 ともあれ、以下に本誌本号より、いくつかの句を挙げておきたい。


  敵はないつて知つてる兎連れてくる     吉野わとすん

  水族に戻らん聴こえぬものを聴き       西平信義

  走れレグホンソーラーパネルの片陰を     瀧澤航一

  いたって押す気の円は欠けている       永井一時 

    木下夕爾「火の記憶」に寄せて

  いのちみな影を引きつつ原爆忌        久里順子

  ぼろしの蝶がみず呑む秋日和        丸山 巧

  

  万歳(ばんざい)

    万世(ばんせい)

  バンザイ岬(みさき)

  (まん)の手(て)の波(なみ)      中里夏彦


  ひるがほのまきつく脳をあかるくす      堀込 学

  秋風や歩き歩きて遠き山           樽見 博

  黙祷(もくとう)に始(はじ)まる集(つど)ひ弥生尽(やよひじん)

                        林 桂

  発芽せぬ数を加えて大根蒔く         堀越胡流

  空っぽのP(ページ)原色蝶図鑑       後藤貴子

  

  鷹揺(たかゆ)れの

  (こずゑ)

  しづもる

  (ゆき)ばんば              深代 響


  かの秋の酒にかすかな波立ちぬ       水野真由美

  きみは水地球は水に守られて         外山一機

  日日草(そのひぐさ)あまたの花芽を生き余す  蕁 麻

  死児たちの眼は夏空を灼きつけて       井口時男

  どうしても折れぬ芒を海と思ふ        片山 蓉 

  結局は誰も来なくて虫時雨          青木澄江

  驟雨して見るだけの海となりにけり      佐藤清美

  


    撮影・芽夢野うのき「わたくしの場所にときどき飛ぶ狐火」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・

秦夕美「また雪の闇へくり出す言葉かな」(第4次「豈」通巻67号より)・・