春風亭昇吉「錦秋のショーウィンドーに映る黙」(春風亭昇吉独演会)・・

 

 昨日、12月2日(月)は、春風亭昇吉落語会(於:渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール)・昇吉独演会の昼の部に出掛けた。春風亭昇吉とは、彼がTVプレバトに出演する以前、毎月、午後3時頃から行われていた、飲みながらの句会「遊句会」の仲間であった。

 TVプレバトでも優勝したことがあるが、何と言っても、本職の落語は、人情噺にさらに磨きがかかり、貫禄も出て来た印象だった。案内状には、平岩弓枝作『笠と赤い風車』をメインにとあり、プログラムは「「権助提灯」「死神」、中入り後に「笠と赤い風車」だった。

 本人作のDVDのスクリーンには、彼の俳句もふんだんに挙げられていた。がここでは、それに拘らず、プレバト中心にいくつかの句を挙げておきたい。


  万緑に提げて遺品の紙袋          昇吉

  露の世のいつぽん長きうどんかな

  春雷すストレッチャーを急かす駅

  スイカバー隣に君のいない海

  白秋の雲穿(う)ぐ右投げ左打ち

  風信子数にあまれる失意あり

  『希望の病』あり盤上に六連星(むつらぼし)

  乳房切除す母よ芒の先に絮

  三月の空に託せるものがない

  母からの手紙無月のダンボール

  一月の笑いの外にひとりいた

  お前しかおらん改札若葉風

  名月は東に父島測候所

  夕焼けやつくばいのある美術館

  職を辞したる尾崎放哉鳥曇

  雛あられ姪にひと粒ごとの音


 春風亭昇吉(しゅんぷうてい・しょうきち) 1979年、岡山県生まれ。

  著書に『マンガでわかる落語』(誠文堂新光社)など。



          鈴木純一「寒晴れを切りぬいておく古都の旅」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・

秦夕美「また雪の闇へくり出す言葉かな」(第4次「豈」通巻67号より)・・