和田信行「舞台裏スイミー役の白い息」(「立川こぶし俳句会」12月13日)・・


 昨日、12月13日(金)は「立川こぶし俳句会」(於:立川市高松学習館)であった。雑詠4句持ち寄り。以下に一人一句を上げておこう。

  冬朝日戦時の空を彷彿す        和田信行
  見え隠る廊下の奥や開戦日       井澤勝代
  雪しまき巌をたたく日本海       伊藤康次
  冬うらら佳き日柄かな姪嫁ぐ      三橋米子
  古書店の時空漂う冬の夕        高橋恵子
  医師の言う「経年劣化」寒日和     川村恵子
  しぐるるや下りホームの鳩一羽     山蔭典子
  黒き影峰におとして冬の雲       大澤千里
  西会津錦明けゆく露店風呂       尾上 哲
  冬落暉手を振り子等は叫びたり     大井恒行

次回は、一月十日(金)、立川市高松学習館にて。



★閑話休題・・大木潤子「豹湖、/氷る水、」(詩集『遠い庭』)・・


 大木潤子第5詩集『遠い庭』(思潮社・2023年5月刊)、第61回歴程賞授賞。本詩集は三部構成でありながら、それぞれの詩篇に題は付されていない。一冊の詩集名があるだけだが、中に、本集名に因む詩篇は、


 鶏の

 声のしなくなった

 遠い庭


 であろう。短い行の詩のみになるが、以下に、三、四篇を挙げておこう。


 暗い径(みち)で、鳥たちが

 私の知らない歌を

 鳴き交わしている


 砂の、流れる音が

 雨のようだ

 鳥が運ぶ

 砂の影


 沢の音がして

 しかし水はないのだ

 光が

 水のように流れていた


 霧が束になって、

 こちらに向かって歩いてくる

 その顔のひとつひとつが見分けられる。

 どの顔も

 かつて生きてはいない、


 誰もいない、

 浜に風が吹いていて、その

 風を

 聞く人がいない


 大木潤子(おおき・じゅんこ) 詩集『遠い庭』(第61回歴程賞)、『わたしの知らない歌』『石の花』『有性無生殖』『鳩子ひとりがたり』。



     芽夢野うのき「山茶花のひかりのなかにすっと入りぬ」↑

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