福永法弘「ジオラマの湖もみづいろ鳥渡る」(『永』)・・
福永法弘第4句集『永(えい)』(角川書店)、帯には、
是生滅法
Tous Les Hommes Sont Mortels
何せうじ くすんで
Memento Mori
今生の舞台迫り出す花の上
とある。著者「あとがき」には、
本句集『永』は、『悲引』『遊行』『福』に次ぐ、私の第四句集であり、六十代の俳句日記である。(中略)
句集名は前句集と同様、多くをこだわらず『永』とした。二冊をつなげば私の福永となるが、わかりやすい題名で、気に入っている。(中略)
還暦を過ぎ父の没年を越えて老境が進むに従い、若い頃には美的にすら捉えていた「死」という観念が、ともすれば、不条理の虚無の翼を広げて覆いかぶさってくる。それを振り払い、振り払い、今生の舞台で愉楽を貪る老残の我が身が哀れで滑稽で、しかし、愛しい。
とあった。ともあれ、以下に愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。
彼岸西風我がと名と同じ法弘寺 法弘
雨なれど大雨なれど大文字
泉涌寺
飛ぶ鳥のけふは地にあり涅槃変
祇園一力亭にて節分と大石忌
一力を出て行くお化け入るお化け
「餅寅」裏に明智光秀の首塚あり
桔梗一輪謀反の動機あれやこれ
竹久夢二寓居跡
胸を病む彦乃のけはひ後の月
母を見舞ひて数へ日の一つ減る
動かざる亀と向き合ふ端居かな
奄美群島
ガジュマルに吊りしぶらんこケンムン来
(注)ケンムンは奄美群島の精霊
壺焼や老いらくにして色好み
山口にて天為同人総会
鰭酒の継酒に所望「山頭火」
父の三十三回忌
出迎への狐火灯る無人駅
有馬朗人先生急逝
木の葉髪遺言めくもの何もなし
花ミモザ俳句この頃をんな歌
わくらばや言葉みじかき水みくじ
関東大震災より百年
螻蛄鳴けり木歩は今も二十六
福永法弘(ふくなが・のりひろ) 1955年、山口県美川町(現・岩国市)生まれ。
★閑話休題・・「金井一郎 翳り絵展ー銀河鉄道を巡る旅ー」(武蔵野市立吉祥寺美術館、~11月4日まで)・・
チラシには、
光と影をテーマとする造形作家 金井一郎(1946年、埼玉県生まれ)。
独自の技法「翳(かげ)り絵(え)」で表現された宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』の宇宙景観。その世界はちいさな光の粒の集積で描き出され、まるで宇宙できらめく星そのもののように感じられます。(中略)
本展では、『銀河鉄道の夜』シリーズより、絵本未掲載を含む翳り絵と、乾燥させた直物や木の実のなかに小さな光を仕込んだランプや、ジオラマのような街並に灯りを灯した物語性あふれるオブジェを展示いたします。
とあった。
撮影・芽夢野うのき「カーテンの向こうの此岸秋澄みぬ」↑
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