松澤雅世「猫の眼の撃ち返すなり稲光」(「四季」11・12月号)・・



 「四季」11・12月号(四季会)、特集は、「河村正浩句集『うたかたの夢』、執筆陣は瀬藤芳郎「『うたかたの夢』について」、広井和之「心象造型=『うたかたの夢』を求めて」、佐々木克子「散る前に」、倉林ひとみ「『うたかたの夢』私の好きな俳句」、中山文子「『うたかたの夢』を拝読させていただいて」、石川綾乃「句集『うたかたの夢』を読む」、伊東類「“うたかた“などと言う勿かれ」、村井一枝「河村正浩様」。また、他に愚生の句集『水月伝』について、伊東類が「句集を読む」で丁寧に評してくれている。深謝!! その一部を引いておきたい。


 (前略)草も木もすなわちかばね神の風

     凍てぬため足ふみ足ふむ朕の軍隊

     多喜二忌はピエタ神も仏もなきと母(セキ)

     かたちないものもくずれるないの春

     戦争に注意 白線の内側へ

 Ⅰには主に戦争、原子力発電所、辺野古、冷害なそ時事的な素材を主に構成されている。時事的というと批判的な内容になるが、それだけなく当事者に寄り添う、特に「神の風」や「多喜二」の句に見える深い情けの情は持って行きようのない苛立ちさえ感じる。


 とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  秋やへうへう碧落の麓亭忌       河村正浩

  蜻蛉にまぎれすいすい生國へ      石井長子

  今生に謎の残りし原爆忌        遠藤久子

  満月にコインと恋の裏表        瀬藤芳郎

  おみならに軽き飢えあり夜の蝉    佐々木克子

  鬼灯の奥へ戦をしかけたる       広井和之

  語り部のあやつる汗をかかへたる    伊東 類

  朝顔の青き一輪とは一会       戸田みどり

  頂は極められずに芒原         中山文子

  幼虫の小さし山椒は実となりぬ     難波昭子

  恋人は野の花のやう糸瓜の忌      石川綾乃

  カクテルの塩の冠星月夜       倉林ひとみ 



★閑話休題・・森澤程「ザムザかさこそ十六夜の揺椅子」(「ちょっと立ちどまって」2010・10)・・


 津髙里永子と森澤程のお二人の、月に一度の葉書通信「ちょっと立ちどまって」より。

  

  宇宙へは行けぬ夜霧が重いから       津髙里永子



             撮影・鈴木純一「同じような名前だし

                 読めないし 

                 頭も」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

福田淑子「本当はみんな戦(いくさ)が好きだから握り締めてる平和の二文字」(『パルティータの宙(そら)』)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・