笹木弘「川底の石を浮かせて水澄めり」(第60回「府中市民芸術文化祭俳句大会/府中市俳句連盟」より)・・

 

                主選者の田中朋子氏↑

 10月27日(日)は、府中市制施行70周年記念事業「第60回府中市民芸術文化祭 俳句大会/府中市俳句連盟」(於:府中市市民活動センター「プラッツ」)だった。愚生の地元の俳句大会なので、よほどの先約がない限り、出席することにしている。また、当日は、JAZZイン府中で、街中のいたるところからジャズの演奏が行われていた。

 当日投句の席題は「新松子」と「雁渡し」。愚生が特選に選んだ句は、


  神磯の鳥居の朝の雁渡し      河野めぐみ


 である。ともあれ、以下に事前投句の方々の成績順に句を紹介しておきたい。


  川底の石を浮かせて水澄めり       笹木 弘

  容赦なき高階層の西日かな        田頭隆徳

  片蔭の列に加わり出勤す        河野めぐみ

  渚から花野へ移す現住所         保坂末子

  涼しさや白磁の壺の細き首        鈴木浮葉

  てのひらび招待状は花野から       岡崎久子

  安全帽要らぬ通学青田風         美野輪光

  竹伐れば隣の竹に寄りかかる       井上治男

  新蕎麦やバンダナ似合ふ四代目     相馬マサ子

  霞ヶ浦の白き帆舟や鰯雲         浦野三枝

  旅客機を絡め捕りたり鰯雲        江橋恒男

  昼顔のやさしい時間ただ歩く      山崎せつ子

  秋暑し四季がうすれていく怖さ     山中とみ子

  幸福は西瓜の種の多いほど       佐久間麗子

  流れ星今度こそはと身構へて       鈴木克巳


 事前投句の愚生が選んだ特選3句は、ブログタイトルにした句と、


  地下帝国の入り口に蚯蚓鳴く       笹木 弘

  魁夷の青魁夷の翠秋澄めり       横山由紀子


 である。


 ★閑話休題・・対馬康子「ナイキロゴアマゾンマーク麦の秋」(「麦」9月号より)・・


 府中市俳句大会の今年の主選者である田中朋子から「麦」9月号をいただいた。「麦」同人などにも、多くの知人友人がいるので、本誌本号のなかから、いくつかの句を以下に挙げておきたい。


  電子辞書どこに奈落の梅雨の底     松岡耕作

  追いつけぬ歩幅遠のく夏帽子      綾野道江  

  夏つばめ余白埋まらぬまま余白     平山道子

  春の雷大らかに鳴る記紀歌謡      斉田 仁

  若葉光こけしが手足ほしがりて     望月哲士

  満目の青葉弥勒の前に着く       滝浪 武

  跳箱に新しき疵夏兆す         田中朋子

  はつなつの鳥空を見せ風を見せ     笠井亞子

  だるまさんがころぶ黄砂にけむる都市  中山宙虫  

  磔像の首の重みに梅雨の蝶       梅木俊平

  四次元の貌を覗きし金魚玉       笹木 弘

  今日あたり少し死んでる梅雨曇     石川夏山

  かなりアンモナイトな気分の白夜   杉本青三郎

 


       撮影・中西ひろ美「十月や名残り色を深くして」↑

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