栗原かつ代「蓮の実飛んでデモクラシーは泥だらけ」(『母は水色』)・・


  栗原かつ代第一句集『母は水色』(現代俳句協会)、序文は山本敏倖「天性の詩境」、その中に、


 (前略)東京都区現代俳句協会四十周年記念俳句大会でトップの大会賞を「座標」で受賞している。

 その受賞作の第一句目が、

「母は水色雲海を駆け抜ける」であり、本句集の表題になっている。

 母はもうその字面だけで情が滲んでしまい要注意だが、そこはかつ代さん見事に自家薬籠中のものにしており、詩情たっぷりに水色と雲海を駆け抜けるという飛躍を持って、一句の普遍性を獲得している。


 とある。また、著者「あとがき」には、


  俳句を始めた時、いつか句集を出して両親の仏壇に供える事が私の最初の目標だった。東京都区現代俳句協会の四十周年記念俳句大会協会賞を戴いたことが背中を押してくれて、やっと一つのケジメを付ける決心がついた。約二十五年の俳句活動は、いつしか私のライフゑワークとなっていた。


 とあった。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。


  女みなイヴの末裔林檎食む        かつ代

  空洞ののマリアの瞳八月来

  伊勢海老や百歳だって脱皮する

  脱衣婆に会わないうちの花衣

  ベビーカーの茅の輪ぐるぐる無限大

  独楽とまることりこの世の端の音

  切り出しかねて空豆はあといひとつ

  長生きの手相に紅葉且つ散りぬ

  身の丈を忘れ独走雪解川

  セシウムの届かぬ高さ鳥曇

  昭和の日学徒の父の丸眼鏡

  かいつぶりずっと潜っていられない

  忘れたることを忘れて日向ぼこ

  木の実降る森の宴のウポポポポ

  逆らわず溺れず雨のあめんぼう

  枯葉くすくすなんにでもなれる子等

  麦青む地図のパズルが欠けたまま

  この星のさくらの真裏なる焦土


 栗原かつ代(くりはら・かつよ) 1957年、大阪府生まれ。



★閑話休題・・河口聖展「Recollection」(於:ギャラリーK)9月30日~10月12日(土)11時~18時(最終日は16時まで)・・




 昨日、河口聖個展「Recollection」(於:Kギャラリー、南越谷・新越谷駅歩7分)に出掛けた。このギャラリーの斜め前にある「きっちゃてん」が愚生のお気に入りで、ここで美味のコーヒーや紅茶を飲むのを楽しみにしている。

 河口聖展、良いです。是非、お出かけあれ!!



     撮影・鈴木純一「志ん朝忌傘もいっしょに置き忘れ」↑

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