宮本佳世乃「八月の旗のまはりのがらんだう」(「オルガン」38号より)・・

 

「オルガン」38号(発行 鴇田智哉・編集 宮本佳世乃)。「オルガン」の同人にとっては初句会だそうで、ゲストに岩田奎、暮田真名を加えて田島健一、鴇田智哉、福田若之、宮﨑莉々香、宮本佳世乃。句評は点の入ったものから以下に一句ずつ、


  酢が夢に効く成長のおそい蛸        田島健一

  アイスキャンデー棒へ氷の筋あつまる    岩田 奎

  ひぐらしやなんだか私語の楽しきこと   宮本佳世乃

  七夕がいがいとうずまいてるんだ      暮田真名

  だつた愛おまつりのにじいろひよこ    宮﨑莉々香

  つやのない石の畳を来るとかげ       福田若之

  口にあてはまる小さな扇風機        鴇田智哉 


 「オルガン連句 巻拾参/脇起歌仙『ながい草』の巻」・曵尾庵 璞 捌、からはウラの一句目まで記しておこう。


  ながい草みぢ(ママ)かい草の春の夢    冬野 虹

   里に野原に頬白の声           四ッ谷龍

  うらゝかに弁当のふた光らせて       浅沼 璞

   棚から古き新聞をとる          宮本佳世乃

  宵闇のはるかな意識との出会        鴇田智哉

   そして九月の水たばこの香        福田若之


ゥ ニューヨークみたいな街はにせの蔦     宮﨑莉々香  (以下略)


 他の記事、「往復書簡『主体』について」10、鴇田智哉から福田若之へ。その結びに、


(前略)37号の最後で福田さんが書いた、「主体の立ちあがり」は「言葉の出来事として経験」されるものであり、「一句の主体が、あくまで言葉だとするなら、僕たちは、むしろ、文体もとい句体のほうに向かうほうが良い」ということに、これはストレートに結びついていくように思います。「霜掃きし箒しばらくして倒る」の句の主体はあの句またがりを、「いくたびも雪の深さを尋ねけり」の句の主体は「いくたびも」というイントロを、定型の一句のなかのある位置に、組み込んだ、と同時に、機械的に組み込まされた、のだと私は考えています。

                          敬具

  九月十五日  / 鴇田智哉/福田若之様

 

 とあった。ともあれ、以下に各同人の一句を挙げておこう。


  空蝉やまぶしい前日がとどく        田島健一

  私だと知つて泳いでゐるひなた       鴇田智哉

  暮れてゆくケバブ屋の車も虹も       福田若之

  ゐない僕らとおまつりのにじいろひよこ  宮﨑莉々香

  川よりも広き螢の夜なりけり       宮本佳世乃 



           撮影・鈴木純一「夜顔

                   ほんとのあたしって

                   なくない? 」 ↑

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