土井探花「『死をよこせ』『あたためますか』おぼろ月」(「朝日新聞」10月13日朝刊/上野佐緒「うたとよむ 俳句は庶民の詩」)より・・
上野佐緒「うたをよむ 俳句は庶民の詩」(「朝日新聞」10月13日、朝刊より)、その中に、
「俳句は庶民の詩」という言葉が好きだ。現代は民主主義の世の中で、身分制度はないということになっているが、いわゆる「経済格差」は最近になって広がってきているように思える。(中略)
そんなことを考えていた時、私の頭に浮かんだ三句を紹介したい。
非正規は非正規父となる冬も
「死をよこせ」「あたためますか」おぼろ月
汗もなくアフマドは四歳だつた
作者は順に西川火尖(かせん)、土井探花(たんか)、楠本奇蹄(きてい)。
西川の句は、子が生まれるという喜びと、非正規労働者という不安定な立場で子を育てる不安や自嘲の入り交じった感慨が詠まれている。
土井の句は、「あたためますか」というコンビニの店員のマニュアル的な言葉を使い、「しにたい」という切実な気持ちやその背景にある生きづらさを受け止められない現代社会を表現している。
楠本の句は、「アフマド」というアラブ圏に多い名前から、恐らくイスラエルのガザ攻撃で亡くなった子どもを詠んだと思われる。ガザでの死者は十月七日の時点で四万二千人に迫っている。その中には多くの子どもも含まれる。
とあった。
★閑話休題・・久保田和代「水鏡に逆さま赤松秋深む」(第34回「きすげ句会・国分寺市殿ヶ谷庭園吟行」)・・
ハギの花ツインタワーに滝の音 杦森松一
石段を踏みはずすなり鹿おどし 高野芳一
月光やサンザシの棘紅き実と 濱 筆治
蜘蛛の糸そよぐベンチの鮭にぎり 久保田和代
なだれ落つ谷の底生(お)ふ野草(くさ)の色 山川桂子
太い節見あげる竹林子らの背も 大庭久美子
せせらぎの岩間スリム薄紅葉 寺地千穂
秋日和結社の集う殿ヶ谷戸 清水正之
こぼれ萩とはならず松の枯れ急ぐ 大井恒行
撮影・中西ひろ美「秋声のいくつか拾い少し捨て」↑
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