森俊人「夭折の詩の神とはに花嫁菜」(『ゆくりなき日々』)・・


 森俊人遺句集(第二句集)『ゆくりなき日々』(ふらんす堂)、その付記には、


 本句集『ゆくりなき日々』は第一部(Ⅰ)の「静観」、第二部(Ⅱ)の「ゆくりなき日々」の二部構成としました。父が生前、二冊分の句集稿としてまとめていたものです。(中略)

  集成はただのあしあと十二月 (二〇二三年十二月四日 病院にて)

 巻末に父が散歩の途中で撮った写真を載せました。マクロルーぺも活躍しました。

 背伸びしたりしゃがんだり、崖の上にのぼっったり、夕日のシャッターチャンスのために懸命に急ぎ足で歩いたり。

 二〇二三年十二月、急な旅立ちとなりましたが、二週間前まで公園を一人で歩き回っていました。その散歩を多くの方々が見守って下さり、声をかけてくださいました。(中略)

 母がいたときから私たちを見守ってくれている竹田さんご家族のご厚意で、長男翼くんがマクロルーぺで撮ってくれた写真も掲載させていただきました。(中略)

                                隅田聡子(遺族)


 とあり、著者生前に、句稿としてまとめられ、著者「あとがき」もしたためられていた。それには、


 (前略)句集名を「ゆくりなき日々」とした。

 ゆくりなしとは、不意に、思いがけないなど、たまたまとか、偶然とかと理解されているが、その出会いからは逃れられなかった事実である。つまり、必然であり、偶然ではない。そんな日々んお記録を綴った句集である。

 九十歳を機に、一日一季語の句を、明石海峡を望む城址内外の小径で徒然なるままの二本杖の歩歩の間に詠みました。(中略)海に耳を傾けながらの日々に浮かぶ句を、一日一季語にて、重複を避けながら、七十二侯ごとにまとめました。所々の余白の頁には、気分転換に、句に因む自作の漢詩を入れました。




 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう


  遠浅の波頭より初燕           俊人

  奥つ城の雨の残花となりにけり

  白雲や翁ひとりの半仙戲

  麦熟れて爆撃機音耳底より

  残る虫突如転調したりけり

  年の瀬の晦日未明に病むを止め

  若草をふにやふがふにやと牛の口

  末黒野はすべて白紙となりにけり

  何もなき生家跡より冬の虫

  十二月八日の山河在りにけり

  何の群れも一羽は起きて浮寝鳥

  今日よりは一句一季語新日記

  生誕は遥か戦前亥の子の日


    九十偈

  白雲山水友孤仙

  草木結花九十年

  日日新吟詩済済

  悠悠活句一壺天


  沈むものすべて沈めて寒泉

  切れ際に「またあひたいね」春隣

  

 森俊人(もり・しゅんじん) 1933~2023年12月、享年90. 




★閑話休題・・第60回府中市民芸術文化祭俳句大会のご案内「兼題投句 当季雑詠・未発表作1組3句」・・ 


 府中市制70周年記念/第60回府中市市民芸術文化祭俳句大会のご案内

兼題投句 当季雑詠一組3句(自作未発表作品に限る) 一人2組まで。

200字詰め原稿用紙に記載、封筒に投句と朱記し下記へ(名前にふりかなを付けて下さい)

・送り先 183-0031 府中市西府町2-10-3-802 笹木弘 宛て

・投句料 一組につき、1000円(投句に同封もこと)

・締め切り 9月20日(金)必着のこと

・選者 田中朋子先生(埼玉県現代俳句協会副会長・「麦」編集長)

 その他、委嘱選者約15名。

   〈大会当日について〉 

日時 10月27日(日)午後0時30分受付開始

場所 府中市市民活動センタープラッツ第五会議室(6階)

席題 2句(季題は当日会場で発表)

参加費 1000円

当日15位まで授賞。

主管 府中市俳句連盟(会長 笹木弘)/共催 公益財団法人 府中文化振興財団

  


    撮影・芽夢野うのき「君と露草プロファイリングしてみよう」↑

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