飯田晴「荒草に都のみゆる秋の昼」(『まぼろしの雨』)・・
飯田晴第四句集『まぼろしの雨』(ふらんす堂)、著者「あとがき」に、
(前略)集名は「古セーターまぼろしの雨棲みゐたり」に因る。
いま、というときを詠んでいるつもりでも、そのものがもつ時間や記憶を受け取っているのだと思うことがある。
不意に開かれる扉は、私のあずかり知らぬ思いを届けてくれる瞬間でもある。思えわざるところから立ち現れるいまとは別の時間や記憶、それらは私の水底世界のような処につながる回路を知っているらしい。それが醸す面白さ、不可思議さえお享受しての一集となった。
とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。
うす墨の花野よりこゑ引きはじむ 晴
雪になりさうと云ふこゑ粉雪に
薔薇の影あつめて鳥を埋めけり
打つてみて蠅叩にも裏おもて
鮨つまむ硝子のをとこ火のをんな
麦秋や死の数に鳥ふくまれず
金風となつて月山撫でてやろ
まれびとに女は雪を尽しけり
水底は春待つによき国ならむ
誰も来ず誰にも会はず冷奴
今井杏太郎夫人 利子さん
百年百歳きれいな青を着て年賀
鍵かけて流氷の夜の海聴かむ
飯田晴(いいだ・はれ)1954年、千葉県生まれ。
★閑話休題・・石原友夫「幾度も過去脱ぎ捨てて土用波」(第62回「ことごと句」会)・・
9月29日(日)は、第62回「ことごと句」会(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。兼題は「魚」+3句、計4句出し事前投句。
以下に一人一句を挙げておこう。
一心不乱に乱れてみせる芒 照井三余
名月や八時になると眠くなる 村上直樹
月だるく盲いし魚の肌の色 渡辺信子
新涼の雨 花の色塗り直す 武藤 幹
青空の頁を捲り小鳥来る 渡邉樹音
孫悟空の毛がやってくる鰯雲 江良純雄
何事も控えめがよし唐辛子 石原友夫
仕方なく秋蝉の木の役回り 杉本青三郎
菊酒を飲んで魚はちょいと酔う 金田一剛
種の味舌に絡まる葡萄かな 杦森松一
秋鮭の卵こぼして波だてる 大井恒行
次回は、10月19日(土)、兼題、場所共に未定。
撮影・芽夢野うのき「きつねの簪すっとまひるの白髪へ」↑
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