月波余生「自粛にも慣れ自粛疲れにも慣れ」(『川柳塔』より)・・

 

 『川柳塔』(川柳塔社)、序は小島蘭幸(川柳塔社主幹)には、


(前略)川柳雑誌・川柳塔創刊100周年記念合同句集「川柳塔」には、全国各地から六一六名の皆さまからご参加いただきました。自選15句の重さをしみじみ味わいたいと思います。

  おれに似よ俺に似るなと子をおもい    路郎

  飲んで欲しややめてもほしい酒をつぎ   葭乃

 令和6年元旦、私は麻生路郎のふるさと。尾道の千光寺に参拝して、路郎ご夫妻の比翼の句碑に川柳雑誌川柳塔は今年100周年を迎えますとご報告させていただきました。

 大正13年2月に「川柳雑誌」を創刊した路郎は「川柳は人間陶冶の詩である」「いのちある句を創れ」「一句を遺せ」と標榜して後進の指導にあたりました。その精神は今でも私たち川柳人の心の支えになっています。


 とあった。ともあれ、本集より、極めて少なくなるが、いくつかの句をあげておこう。


  先輩が左派だったのでボクも左派       江島谷勝弘

  ボケるひまないのにちゃんとボケてきた    大久保眞澄

  春の絵で飾るおひとりさまの壁         木本朱夏

  心臓は本日止まる気配なし           新家完司

  みんな笑っている僕の写真帳          内藤憲彦

  二人とも歩けるうちにとフルムーン       平賀国和

  千鳥足あんなものにも個性あり         松岡 篤

  子育て終え夫育てが始まった        山下じゅん子

  密会の未完のスジが取れにくい        くんじろう

  三月十一日再生ボタンを押す          月波与生


★閑話休題・・井上治男「十五夜の月ホスピスを抱きけり」(第33回「きすげ句会」)・・


 本日、9月19日(木)は、第33回「きすげ句会」(於:府中市市民会館ルミエール)だった。兼題は「十五夜」。


 以下に1人一句を挙げておきたい。


    「姨捨」をみて

  棄てられし媼(おうな)くづるる名月(つき)の底  山川桂子

  十五夜や蕎麦がきを練る父の影           高野芳一

  ふとひとり皆見ているか今日の月          寺地千穂

  老いし犬腹ばいもがく蓼の花            井上治男

  十五夜の月に横雲ミルフィーユ           井上芳子

  ふんはりと土鍋に香るきのこ飯          久保田和代

  寝不足の喉に一つぶ白薄荷             清水正之

    オホーツクの海を経てふるさとの川に

  鮭遡上(のぼる)産みてし果てるいのちなり     濱 筆治

  出来ること出来ないことの菊人形          杦森松一

  ただ歩く廃都の街の花野かな            大井恒行


 次回、10月17日(木)は、国分寺の殿ヶ谷戸庭園吟行。



       撮影・鈴木純一「シャツ乾く一軒おいて秋の音」↑

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