宮入聖「月の姦日の嬲や蓮枯れて後」(「ふらんす堂通信」181より)・・


  「ふらんす堂通信」(ふらんす堂)、藤原龍一郎連載「こわい俳句」の本号(第25回)は、昨年逝去した宮入聖の「月の姦日の嫐や蓮枯れて後」である。それには、


(前略)月の姦とは、月ごとの姦淫の謂いか? 日の嬲とは、毎日の嬲り嬲られる淫行の謂いか? いずれにせよ、この上の句からは、倫理的にはずれた荒淫もイメージが濃密にある。そうなると、枯蓮とは荒淫の果ての男女の亡骸の映像ともとれなくはない。グロテスクなヴィジュアルが読者の脳裡に浮かびあがる。(中略)

  青大将に生まれ即刻殺(う)たれたし

  槍持てる霊蒼惶と夏の暮

  桃啜り恍惚の子を啜りたし

  黒牡丹毒のむ将の金の髭

  祈祷師が札貼りちらす涼しさよ

 どの句からも、読者は想像力によって、こわい物語を紡ぎ出すことができる。月の姦の句と同様に恐怖と官能性が融合している。

 宮入聖ははじめ飯田龍太門下の「雲母」の新人として頭角をあらわし、一九七三年には伝説の「俳句研究第一回五十句競作」で佳作第一席になり、一九八三年には現代俳句協会主催の第一回現代俳句新人賞を受賞している。句集も前記の『聖母帖』をはじめ、八冊刊行している。一九四七年生れなので、攝津幸彦と同世代になる。


 とあった。ともあれ、本誌本号より、いくかの句を挙げておこう。


  手に足に指あり扇風機には羽        池田澄子

  蚊を打つて講義はじめる漢かな      大木あまり

  にいにい蟬のむくろをノート綴ぢ目に置く  小澤 實 

  大言も壮語もはるか雲の峰         林昭太郎  

  ぶつかられたるはうの蟻俊敏に       阪西敦子

  あかつきの夢に雨音ほととぎす       浅川芳直

  手にむちゆむちゆねばりつくジェル朝暑し  南十二国

  火取虫沈みきれざる水の嵩        小野あらた



★閑話休題・・中村裕子ジュエリークラフト展(於:国立 ギャラリービブリオ)8月22日(木)~27日(火)・・



  昨日、愚生は、9月4日(水)から始まる立川市曙福祉会館でのシルバー大学「俳句講座」の会場の下見をした後、隣の国立駅に降り、ギャラリービブリオに立ち寄った。その「ひろこの庭」の説明文には、


 「ひろこの庭」には、自然のリズムで生きる動物、鳥、植物、そして昆虫の営みがあります。(中略)

 ガマズミの花が咲き、豊潤な香りで虫たちを誘います。

 おや、ハナムグリがたってきました。

 空から大きな雨粒が落ちてきます。(中略)

 季節はゆっくりと移っていきます。

「ひろこの庭」をお楽しみください。


 とあった。


        鈴木純一「ひとり寝のヤマドリタケを騙しとり」↑

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