松尾芭蕉「しら菊の目にたゝ見る塵もなし」(「新・黎明俳壇」第11号より)・・

 

「新・黎明俳壇」第11号(黎明書房)の特集は、「江戸時代の女性俳人VS男性俳人」。「気鋭の俳人10人が鑑賞!」の気鋭の俳人は、田彰子・千葉みずほ・小枝恵美子・後藤麻衣子・横山香代子・村山恭子・なつはづき・川島由紀子・かわばたけんぢ・山科希。さまざまな連載記事があり、意外に楽しめる。前田砥水「私の海外詠⑨/ポートレート・イン・赤い風車」、松永みよこ「俳句の中の人たち⑨/妻棄て子棄て風となり・俳人広瀬惟然」、太田風子「ニューヨークから俳句⑪/SOHOとヨーコ・オノ」、村井敦子「遠くの句碑・近くの句碑/滋賀・北村季吟句碑」、赤石忍「俳句こぼればなし/子規は『自由人』」、朝倉晴美「二十四節気を俳句で楽しむ/小雪11月22日~12月6日」、千代女「俳句殺人事件簿⑪/幽霊」など。なかでも、武馬久仁裕「俳句は省略の文芸ではありません」の中には、


 (前略)俳句は、言葉によって作られた世界です。五・七・五や切れ字・季語も含めた様々な言葉さばき(・・・・・)によって。我々が生きる日常そものではなく、我々が生きる日常を踏まえつつも、我々が生きる日常を超えた世界、すなわち虚構の世界を生み出す器です。ですから、散文を省略すればできる世界ではないのです。

 その意味で『俳句』二〇二四年二月号の「特集省略」にある鳥居真里子の推敲過程は興味深いです。

  【原句】陽炎や繃帯ほどきつつ来たり

  【推敲】かげろふの繃帯ほどきつつ来たり

 原句は、「陽炎や」と、「や」で切られているために、かえって「繃帯ほどきつつ来たり」が、日常に引き付けられます。繃帯をほどくのが、人間になるのです。しかし、推敲句は、「や」が「の」に変えられることで、繃帯をほどくのは「かげろふ」自身になります。日常を超えた不思議な世界の出現です。


 とあった。ともあれ、本誌本号の「黎明俳壇」入選句より、いくつかの句を挙げておこう。


 特選 鳥曇り低空で飛ぶプロペラ機     水野巨海

    夏の雲酸素ボンベを引く少女    松岡久美子

 ユーモア賞 

    ドライヤーなど要らぬ齢や春の風   霧賀内蔵

    友達もみんなも骨が折れている     早希子  


 


★閑話休題・・朗読グループ八重の会・第36回「夏の朗読会/千鳥ヶ淵に行きましたか」(府中市中央文化センター・ひばりホール)・・




 昨日、8月24日(土)は午後より、「きすげ句会」の仲間が参加している「朗読グループ八重の会」の第36回夏の朗読会・構成・演出楯岡眞弓「千鳥ヶ淵に行きましたか 石川逸子詩集より」(於:府中市中央文化センター・ひばりホール)を聞きに行った。

 案内チラシには、

 私たちは、戦争を語り継いできました。今年は戦後79年になりその惨状を目にした人たちも高齢となり、語り続けることが難しくなってきています。今回は平和を願い『千鳥ヶ淵に行きましたか』を朗読します。千鳥ヶ淵の戦没者墓苑に納められた遺骨は本年度で370700柱になりました。

 大学生とともに、あの時代の事実をしっかりと捉えて朗読します。


 とあった。


          鈴木純一「北を睨むマジソンバッグ肩にして」↑

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