細谷源二「丁丁と妻を打つわれより弱き故に」(「ペガサス」第20号より)・・


 「ペガサス」第20号(代表・羽村美和子)、トピックⅠに「『ペガサス』1年遅れ5周年記念・鎌倉吟行会」、トピックⅡは東國人句集『白熱灯』、作品評に、外部から鈴木牛後「ワンダーを求めて」など。連載の論考に瀬戸優理子「雑考つれづれ『細谷源二~生きるための俳句④』」。本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  ややこしい生い立ちところてんつるり     浅野文子

  落椿スティックのりのふとつきる       東 國人

  夏浅し柱時計の音軋む            石井恭平

  月涼し裏に紅旗のはためけど         石井美髯

  金魚鉢くもりて魚影らしきもの       伊藤左知子

  小判草乳母車から小さき足         伊与田すみ

  初夏の太き一行心太             Fよしと

  富弘の鉄線模写す傷心など          小川裕子

  つつがなく孟宗竹にございます         きなこ

  花茨恋愛偏差値低めです           木下小町

  地球から弾き出されてハンモック       坂本眞紅

  初夏の海風翼生えて来た           篠田京子

  青葉騒なにか忘れて軽い鞄         瀬戸優理子

  まだどこも濡れていない水着干す       髙畠葉子

  草笛の半音低く祖母の庭           田中 勲

  初桜時間の外に椅子ひとつ          中村冬美

  良い戦争悪い戦争梅雨きのこ        羽村美和子

  駅ピアノ一気に夏へ転調す          水口圭子

  迎え梅雨眼みひらく白龍図          陸野良美


★閑話休題・・谷口智行「夜の長し死者は褒められ叱られて」(「山猫便り/2024年8月7日」より)・・


「山猫便り」は山内将史の葉書通信。冒頭には、


  人形の唇に鏡をあてて霜     山内将史


 とある。そして、


 安井浩司さんは葉書に〈貴句「人形の唇に鏡をあて」る=それは何だろう。そこに鏡の作用で二体の神、すなわち汝神と我神が生れるに違ない。それでよいのだと、思わずにいられない、実に不思議な仕草ですね〉と書いてくれた。自慢です。


 とあった。 



    撮影・中西ひろ美「魂迎えゆっくり行けばよいものを」↑

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