竹中宏「ヒロシマの日や山ゆかば草むす田」(「翔臨」第110号)・・


 「翔臨」第110号(翔臨発行所)、中田剛「半醒半睡の記ー虚実は縄を糾うごとく(五)」の中に、


(前略)「草苑」に入会した理由は、関わっていた同人誌「鷺」のリーダーで、信頼していた先輩・三浦健龍氏がかつて「最近の桂信子の作品はおもしろいぞ」と言っていたのをふと思い出したからだ。因みに三浦健龍氏の奥さんの谷村能里子さんも俳人で、「草苑」で新人賞を獲って、一時期、期待の新鋭であったが止めてしまわれたのは至極残念なことであった。


 とあり、愚生も、その三浦健龍を中心とした同人誌「鷺」に、高柳重信論を何回か連載させていただいた。同人でもない愚生によくページを割いてくれたと思う。重信はまだ健在だったので、その頃、重信論を書いた人はまだ居なかったように思う。中田剛も注目されていた同人の一人だった。妹尾健もいたのではなかろうか。愚生は、後で知ったのだが、確か岸和田に居た三浦健龍の父は三浦秋葉という「雲母」の同人で、主宰誌を持たれていた。

 ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。  


  西陲(せいすい)に踊りて歌をうながせる    竹中 宏

  龍天に登る自在に車椅子            西川章夫

  呉線に海と朱欒の照り返し           洲﨑展子

  あやふやなわたくしそして月の海        土井一子

  夕ざくら父より娘へ「帰らうか」       稲守ゆきほ

  未来図は自販機で買へ白魚食ふ        中山登美子

  十日月かなひよつとこの豆絞り         加田由美

  パリこの頃半袖の人毛皮の人          小門 都

  春の日の青いいちごを召しあがれ        林 達男

  鵜か鮎か鵜匠か波か知れぬまま         戸村静生

  昼の貨車ぎしぎしに音残りけり         槌井元子

  半夏生餅祈るかたちの手となりて        小林千史

  雛流し極悪人から方舟に            小笠原信

  みづうみの風は山へと青田波          尚山和桜

  二(ふた)声を机の吾に青葉木菟        小山森生

  より高く深く喰ひ入るいかのぼり        中村紅絲

  童貞聖母マリア無原罪の御孕りの祝日に芬々たる下穿き

                         東樋口護

  夕顔がひと事でない話聞く           後藤洋子

  こころの関なんなく越ゆる春の涛        井上和子

  ほぼほぼはる濁点とってほほほほほ       河地住美


★閑話休題・・濱筆治「原っぱ葉っぱバッタ捕る子の顔真っ赤」(第32回「きすげ句会」)・・


 本日、8月29日(木)は、第32回「きすげ句会」(於:府中市生涯学習センター)だった。兼題は「虫」。以下に一人一句を挙げておこう。


  つないだ手そっと離して曼殊沙華      井上芳子

  八月の千鳥ヶ淵に行きました        杦森松一

  ひと枝に寄りて空蝉家族葬         高野芳一

  秋の風うらなりの尻まげにけり       寺地千穂

  涼風や欅の下に吾も居り          清水正之

  蟬しぐれ虫喰い算の老後にて        井谷泰彦

  掌の中に草の匂いのきりぎりす       井上治男

  墓じまひふるさととほくなりにけり     濱 筆治

  死神のほくそえむ笑むなり木下闇     久保田和代

  夜の蝉クジラが空に浮かぶ夢        山川桂子

  澄んだ青空「お母さん」と散る暑夏79年 大庭久美子

  われからの腹の虫とも地虫鳴く       大井恒行


 次回、9月19日(木)は、会場をルミエール府中市民会館第3会議室に移ります。

兼題は「十五夜」。



 撮影・芽夢野うのき「明日のことなどケセラセラこうして野分」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

救仁郷由美子「遠逝を生きて今此処大花野」(「豈」66号より)・・

小川双々子「風や えりえり らま さばくたに 菫」(『小川双々子100句』より)・・