林桂「花(はな)といふこの世(よ」に開(ひら)く彼(か)の世(よ)かな」(「俳句人」7月号・第759号)・・


 「俳句人」7月号・第759号(新俳句人連盟)、特集は「朱夏のしずく」、「後記」によると俳句作品10句とミニエッセイを、「今回、磨き抜かれた言葉の表現を堪能させてくれるベテラン作家に、新しい光をあてることとした。各作家の魅力を堪能していただきたい」とある。また、「俳人『九条の会』」(新緑のつどい・2024年4月14日・於:北とぴあ)の講演会「激動の世界と向き合う」の報告(山本恵子)があり、大石芳野(写真家)と堀田季何(俳人)の講演要旨が記されていたが、講演後の交流会では「堀田季何さんが俳人『九条の会』の呼びかけ人になるというサプライズがあった」とまとめられていた。

 また、本誌本号の「招待席」は、林桂「松の花まで紀行」と愚生・大井恒行「水月伝余滴」の5句とミニエッセイである。ともあれ、本誌より、いくつかの句を挙げておこう。


  水団と汗の記憶よガザの飢餓     飯田史朗

  子手毬に今年も触れて米寿生く    石川貞夫

  真っ白い時間の帯を染める藤    田中千恵子

  たんぽぽは太陽の子と画くこども  望月たけし

  薔薇の棘北斎の波突き刺さる    吉平たもつ 

  ガザ五月瓦礫の中に椅子一つ     伊藤哲英

  長靴に日本が入るつばくらめ     山中西放

  コンテナに蒲公英も見え基地相模   佐藤 信

  リラ冷えの男頻りにきしむ椅子    入江勉人  

  チャップリンの杖峰々を踏んだ杖  柄澤なをこ

  いつしかに屋号消えたり竹の秋    内田賢一

  こでまりの樹齢百年若き白      小田金幸

  車輪梅咲く除染廃棄土の丸抱え    佐藤正子

  百歳体操連れ立っていく街薄暑   大後戸綾子

  ひとり身の自由不自由夏に入る    菊池義一

  日本国憲法前文夏木立        大森恒夫

  (まつ)の花海遠(はなうみとほ)くても近(ちか)くても

                     林 桂

  見残しの地に降るひかり花の雨    大井恒行  


★閑話休題・・加藤節江「窯焼きの娘に生まれ美濃は夏」(「第一回 木暮沙優音楽個展」より)・・ 


             左・中條萌乃、右・小暮沙優 ↑        

 先日、7月21日(日)、昨年の木暮沙優朗読モノオペラ《つなぐ》「広島」に続いて、第一回「小暮沙優 音楽個展(於:ソフィアザールサロン)に出かけた。ゲストのヴァイオリニストに中條萌乃。プログラムには、「歌曲集《風が吹く》(加藤節江句/2023年作)、「ヴァイオリンのためのモノオペラ《人類の午後》より〈前奏〉(句:堀田季何/2022年制作・2024年編作)、後半には「朗読ものっぺら《つなぐ》より(2023年制作)とあり、Aパート(句:句集『広島』より)、〈広島三句〉(句:伊達みえ子)、Bパート(句:句集『広島』より)とあった。語り継ぐヒロシマである。



         撮影・鈴木純一「一寸の死と一寸の夏の虫」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

救仁郷由美子「遠逝を生きて今此処大花野」(「豈」66号より)・・

小川双々子「風や えりえり らま さばくたに 菫」(『小川双々子100句』より)・・