寺井谷子「わが筑紫の血や荒れはじむ麦の秋」(「現代俳句」8月号より)・・
「現代俳句」8月号(現代俳句協会)、特集は「第24回現代俳句大賞受賞 寺井谷子」である。そのエッセイに寺井谷子「よき人に会う」。その中に、
八歳になった早春の一日、父横山白虹に連れられて探梅句会へ行った。(中略)小流れの縁に立つ緑の草に目がゆき、一本手折った。美しい水が滴る。(中略)句会が終ったのか、私を呼ぶ父の声がする。何本かのその草の手ごたえを握りしめたまま家に帰った。翌日、担任の先生にお話しすると、「木賊(とくさ)ですね。水?出てこないでしょ」とあの私の指を濡らした清々としたのは何だったのだろう。素っ気ない言葉に、八歳は不機嫌になった。
しばらくして次のような句が発表された。
二コよ!青い木賊をまだ採るのか 白虹
「青い木賊」は、「俳句」と同義語となって、今も私を力付けてくれる。(中略)
横山家の家訓に、「よき人に会う」というのがある。横山白虹が長く会長の責を負い、活動の中心となった地区活性化や大会開催の拡大も「相会う」ことで生まれるものへの期待があったろう。
とあった。他に、寺井谷子自選30句、論考に高野ムツオ「新興俳句から」、久保純夫「寺井谷子という存在」とある。 また、愚生は本号に。写真を見て一句「わたしの一句」を求められたので、多行表記の句を投じた。
一睡(いつすい)の
一穴(いっけつ)
戦(いく)さ
夏嵐(なつあらし) 大井恒行
また、前号にひき続いて、星野高士と筑紫磐井の対談「『花鳥諷詠と前衛』―—三協会統合の可能性(下)」がある。そして、宮崎斗士「新現代俳句時評/現代俳句新人賞は今」、
巻頭エッセイ「直線曲線」には、川崎果連「俳句を広めるための私の取り組み報告〈地区協会の初心者講座開設に寄せて」など。ともあれ、本号より、いくつかの句を挙げておこう。
我という化物の手に笹百合よ 鳴戸奈菜
ひとはみな首ひとつ持ち花樗 渡辺誠一郎
砂時計の砂の頂上送盆 神田ひろみ
私を改行している日永かな 白石司子
背泳ぎは無防備すぎる泳ぎ方 西谷剛周
原爆投下予定地に哭く赤ん坊 寺井谷子
青林檎嚙むたび海が新しい 茂里美絵
はつなつや肺は小さな森であり なつはづき
義士の日のテディベアよりふとノイズ 北山 順
終はる永遠 真円の虹がてのひら 小田島渚
背泳ぎの空は壊れてゐる未来 土井探花
虫しぐれどこかに落ちてゐる歯痛 楠本奇蹄
撮影・芽夢野うのき「流れるに息をひそめし精霊たち」↑
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