五島高資「麦秋や空のそこひは戦ぎけり」(『星辰』)・・
五島高資第5句集『星辰』(角川書店)、自跋には、
生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く
死に死に死に死んで死の終りに冥し
空海『秘蔵宝鑰』序
十年前、高野山で金剛界結縁灌頂と胎蔵界結縁灌頂を授かった。大凡それ以降に詠んだものから三三三くを選んで今回の句集に収めた。いずれにせよ、今日まで何とか俳句を詠むことが出来たのは、陰に陽に私を支えて頂いた方々のお蔭であり、茲に深謝申し上げる。
とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
先師。兜太を悼む
片目にて笑む師のなみだ風光る 高資
春星へかよふ寝息となりにけり
沢瀉や水鏡より抜け出せる
人影を轢く片蔭の電車かな
怺へたる気息ゆつくり風の色
いなづまや海より山を拝みたる
橘やみもろに至る波の音
微笑んで地にかへるまで虫鳴けり
輪の外も廻つてゐたる踊かな
石を積む月の光となりにけり
湯に変はる水のゆらぎや憂国忌
子の手には届けりベツレヘムの星
五島高資(ごとう・たかとし) 1968年、長崎市生まれ。
撮影・鈴木純一「善きなすび悪しきなすびと衣替え」↑
ご無沙汰しております。この度は拙句集をお取り上げ頂き、また拙句ご紹介して頂き、重ねて心よりお礼申し上げます。ますます精進致したく存じます。取り急ぎ、深謝まで。
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