おおしろ建「水平線は綴じ紐 抜けば無数の空がはばたく」(『俺の帆よ』)・・
おおしろ建第二句集『俺の帆よ』(コールサック社)、解説は鈴木光影「沖縄の水平線から宇宙へ羽ばたく心象俳句―—おおしろ建第二句集『俺の帆よ』に寄せて」。その結び近くに、
(前略) オリオン座横倒しなら俺の帆よ Ⅷ章
タイトルとなった句。オリオン座は、三つ星の上下に明るい星が二つずつ位置し、冬の南方の空で見つけやすい。三つ星マークのオリオンビールの商標からも、夜空に輝く様が沖縄の人々に親しまれてきたことがわかる。この句のオリオン座は、これまで述べてきたように建氏の想像力によって「横倒し」にされ「俺の帆よ」と建氏の心象の海を渡る帆船に掲げられる。(中略)
現代沖縄の俳人・建氏は、オリオン座煌めく夜空の下、沖縄の海に心象の「俺の帆」を張り、豊穣の海風を集めて「俺の」船をを進めてゆく。
とあり、また、著者「あとがき」には、
句集『俺の帆よ』は、私の第二句集であるから、もう三十年が経つ。途中、何度か句集発行をと思ったが、忙しさにかまけ、怠け癖まで浮上し、うまくいかなかった。そうこうしている間に、家庭内ライバルの妻が「もう待てない」ということで先に第二句集・おおしろ房句集『霊力(セジ)の微粒子』二〇二一年・コールサック社)を発行した。ライバルに二歩ほど遅れをとってしまった。(中略)
二〇二三年に、「天荒俳句会」の代表・発行・編集を担っていた野ざらし延男先生が退いた。(中略)代表をおおしろ建。編集長を山城発子さんが担うこととなった。「新しい俳句の地平を拓く」俳句革新の精神がどこまで受け継ぐことができるか、不安は尽きないが天荒同人の仲間と共に頑張りたい。大きな視野で物事を見つめ、新しい発見ができればと思っている。
とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。
睫毛の送電線 虹かすかに切り取られ 建
風産まるアンモナイトのつむじより
二つ折りで吐き出される白紙の憤死
初噛みのジュゴン宇宙へ泳ぎ出す
「テロしかない」口臭強く匂う五月
芳一のちぎれた耳か寒椿
プールを出れば犬かきに似た日常
菜の花や水平線が崩れてる
黒ぐろと犬は水銀灯に喰われてる
雨一滴墜ちて水平線があふれ出す
うりずん南風(ベー)手足に水かき生えている
ティッシュ一枚乗せれば消える基地の禍事
背中みて育つなら背(せな)捨てる秋
おおしろ建(おおしろ・けん) 1954年、沖縄県宮古島市生まれ。
撮影・鈴木純一「取り引きはみんな殺した後の月」↑
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