太田土男「新緑をゆく新緑になつてゆく」(『季語深耕/まきばの科学ー牛馬の育む生物多様性』より)・・
太田土男著『季語深耕/まきばの科学ー牛馬の育む生物多様性』(コールサック社)、帯の惹句に、
自然と季語の宝庫・まきばの魅力を「自然×科学」でやさしく深く解説!
草地生態学の専門家でもある俳人が案内する癒しの開放空間
とある。「まえがき」の中に、
(前略)明治以前、牛馬は使役に使われていましたが、乳を搾り、肉を食べるための畜産はそれ以降のことです。特に本格的に畜産振興が勧められたのは昭和三十五年頃からです。斯くして、まきばは普通に眼に触れるようになりました。(中略)
「まきばの科学」では、牛馬の暮らしぶり、まきばと人の関わりに触れながら、科学の目も交えて、まきばを読み解いてゆきます。できるだけ例句を示して、新しい俳句の場、まきばを詠む勘どころを示したつもりです。(中略)
まきbさには癒しがあります。まずまきばへ出かけて、思う存分その空気を吸ってみたいものです。
とあり、また「あとがき」には、
(前略)『季語深耕 まきばの科学』は、先の『季語深耕 田んぼの科学』の姉妹編であり、続編です。これらは、「田んぼ」、「まきば」という切り口で季語を深耕した季語論です。読み易くするためにいろいろな工夫をしたつもりです。時に私の経験を交えて書き進めたこともその一つです。
とあった。とりあえず、一カ所を例として紹介し、あとは、本書中から、当季節のいくつかの句を挙げておこう。
牛の乳みな揺れてゐる芒かな 鈴木 牛後
ススキは一度その場所に定着すると、根茎によって大きな株をつくってゆきます。ススキ草地はそんな大小の株がランダムに散らばっています。その隙間に、いろいろな植物が入り込んで、ススキ草地をつくっているわけです。ススキ以外にトダシバ、オオアブラススキがよく見られます。秋の七草のハギ、キキョウ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマなどもススキ草地の草々です。オカトラノオ(夏)、アキノキリンソウ、シラヤマギク、ノコンギク、ユウガギク、マツムシソウ、ツリガネニンジン(秋)なども上げておきましょう。
生きものを走らす山を焼きにけり 野見山ひふみ
水牛の角にひろがる鰯雲 島袋常星
蕨摘む水のつくりし径辿り 藤田直子
空冷えて来し夕風の辛夷かな 草間時彦
山国の空に山ある山桜 三橋敏雄
鳥のこゑ降つてくるなり水芭蕉 久保田哲子
牛虻よ牛の泪を知つてゐるか 永瀬十悟
死ぬ日など無きやうに蠅生まれけり 今瀬剛一
草刈の昨日刈りたる山を越ゆ 木附沢麦青
青嵐幹まつすぐに並びけり 井越芳子
朴咲くや雲より馬車の来るごとし 大串 章
行々子火を発すまで鳴きにけり 正木ゆう子
夏の蝶空に大波あるやうに 森賀まり
太田土男(おおた・つちお) 1937年、川崎生まれ。
★閑話休題・・岩本行雄 新作展and ボサノバ in 代官山 5月3日~5月5日(於・街箱B1 Far West Cat)・・
本日、連休の真ん中で、愚生に予定は入っていなかった。この案内書を頂いた岩本行雄には面識はなく、覚えがない。はて、誰であろう?と思ったが、出かけることにした。
不思議なことがあるものだ。画廊入口の花籠のカードに「御祝 岩本行雄様/池田ひろみ/板屋ちさと」をみとめた瞬間、もしや故長岡裕一郎の姉妹の名であったような…?と思った。
地下の画廊に降りて行くが、愚生のような老人には急すぎる階段。降りる途中に聞こえてきた話し声のなかに、確かに、ナガオカ・ユウイチロウの名を聞いたのだった。あろうことか、今回の個展の主は、生前の長岡裕一郎と最後の酒食を共にし、かつ、亡くなったときの第一発見者で芸大時代の友人だったのである。
愚生の今回の句集『水月伝』には、裕一郎への追悼句「裕一郎驟雨に似たる花吹雪」(2008年4月30日・享年53)を入集している。まるで、長岡裕一郎が招き寄せたのではなかろうか。個展は明日まで開催している。明日は歌・ギター・ピアノでジャズスタンダードなどの演奏・・15時~16時30分もあるという。近くの方は出かけられてはいかがだろうか。渋谷・並木橋バス停から八幡通りを歩5分程度。
芽夢野うのき「行く春の怖くて緑ついばみぬ」↑
コメント
コメントを投稿