檜山哲彦「放埓のステンドグラス百閒忌」(『光響』)・・


 檜山哲彦第3句集『光響』(朔出版)、挟み込まれた便りに、


 このたび、檜山哲彦の第三句集を上梓することとなりました。/生前に賜りましたご厚情に感謝いたしますとともに、/ここに謹んで最終句集をお送り申し上げます。

 ご高覧いただき、お心に留まる一句がございましたら、/同封の葉書にてお知らせいただければ幸甚に存じます。

          令和六年 三月          檜山良子


 とあった。愚生、檜山哲彦の死去のことは知らず、まずはご冥福をお祈り申し上げる。昨年12月30日死去とあるから、本集の句稿は生前にほぼ整えられていたのであろう。「あとがき」に相当する箇所には、2023年12月の手帳より、とあって、「詩的なもの」と題した一篇が収められている。その終わりの部分には、


(前略)絵は見てもらい、音楽は聞いてもらい、

    俳句は読んでもらい、相手に喜んでもらうもの

    俳句は穴、俳句は窓、俳句は光

    俳句は詩である、というしゃちこばったことを言い立てるより

    日常の小さな詩を楽しもう。


    「新鮮」な俳句を詠みたい

    「新鮮な窓」をあけたい  

    言語表現の丈の高さで


    俳句の隙間がひらけ、詩の窓がひらく


 とあった。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。


  風払ふのみ裸木となりきつて       哲彦

  反魂丹召せとバレンタインの日

  詩に熱き言葉をひとつ木の葉髪

    母 逝去

  終ひの紅うすううすうと蚯蚓鳴く

    池内紀さん

  ぢやあと手をさはやかに挙げ振り向かず

  鰭ほどき金魚の天地自在なる

  裸木や鳥チチャチャチと半蜜柑

  三鬼忌や空わかちあふ雲と鳥

  地に触るる音なかりけり桐一葉

  茅の輪てふ時計に入るや棒となり

  蝙蝠の曲直曲のかろらかな

  身ほとりを温(うん)わきのぼり紅薔薇

    悼 比嘉半升さん

  小夏日や抱瓶(だちびん)かかげこの天使

  寒すばる光ふれあふ音降り来


 檜山哲彦(ひやま・てつひこ) 広島県生まれ。1952年~2023年12月30日、享年71。



撮影・鈴木純一「一辺が那由他の藤の棚ありてその咲く下に入りて声出す」↑

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