平畑静塔「青胡桃みちのくは樹でつながるよ」(「子規新報」第2巻100号より)・・


 「子規新報」第2巻100号(創風社・子規新報編集部)、特集は「平畑静塔の俳句」。静塔30句選は小西昭夫抄出。「平畑静塔の一句」鑑賞に約40名が執筆など。静塔は1905(明治38)年、和歌山県海草郡和歌浦町(現・和歌山市)生まれ、1997(平成9)年に没している。

 その他の記事は、表紙には坪内稔典の連載エッセイ「あんぱんのある日⑪」、連載に大廣典子「子規の風・子規からの風 77/子規の絵69」、神野紗希「俳句の技巧 第60回/枕詞②」、渡部光一郎「子規に寄せて」、福田安典「続 驚きのえひめ古典史84」、谷さやん「微苦笑俳句」、宇田川寛之「となりの芝生ー短歌の現在ー181」、わたなべじゅんこ「母屋のひさしー俳句史の風景ー171」、森原直子「遠くの親戚ー現代詩への誘い―82」、堀本吟「近くの他人ー現代川柳論ー151」、青木亮人「時のうつろい。句の響き34」、世良和夫「俳句こぼれ話50」など、20ページほどの冊子なれど読みどころ満載である。ともあれ、以下に本誌より、静塔と他のいくつかの句を挙げておこう。


  徐々に徐々に月下の俘虜として進む     平畑静塔

  我を遂に癩の踊の輪に投ず

  藁塚に一つの強き棒挿さる

  狂いても母乳は白し蜂光る 

  銀河より享ける微光や林檎嚙む

  鉄格子からでも吹けるしやぼん玉


  雲は秋あんパン一個と自己愛と       坪内稔典  

  一瞬で子の髪ピンク春の雪         衛藤夏子

  大寒のトイレの小窓ステンドグラス    川島由紀子

  被災地の踏ん張っている雪だるま      小西昭夫

  月面の風をおもへり人丸忌         杉山久子

  この先は時間野放し燕来る         中居由美

  一日に一ミリ芽吹く獣道          東 英幸

  冬夕焼けゆうやけこやけの友がいる     陽山道子

  遠く離れた四肢の初雪はらう       武馬久仁裕

  煙草屋も米屋もつぶれ春の町       松永みよこ



  撮影・鈴木純一「怒らないからホントのことを言いなさい」↑

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